▽ ページ18
.
店での食事を終えて、もうすっかり暗くなってしまった街へ繰り出していく。
すれ違うカップルたちは、それぞれに幸せそうな表情をしていて。
……俺らは、彼らからはどう見えているのだろう、なんて考えてしまう。
果たして俺たちは、幸せそうに見えているだろうか。
彼女の歩幅に合わせてゆっくりと歩きながら、ちらりとその表情を伺い見る。
すると、同時に彼女も、俺の方を見た。
……どこに行くの？
そう、瞳で問いかけられる。
俺はそれには答えずに、彼女の手を取って握った。
……手を繋いで歩くのだって、どれくらいぶりかな。
寒さだけではない震えが、感じられるようだった。
そうやって華やかな街を、手を繋いだまま、ほぼ無言で歩いた。
……でも、俺にとってはそれもどこか新鮮で。
彼女の体温を感じながら、目的地まで導いていった。
｢ここ｣
十数分歩いて到着したのは、とある公園。
クリスマスの時期にはイルミネーションで飾られていると聞いたから、調べてみたらかなりの規模らしくて。
女の子が喜ぶようなことは、はっきり言ってイマイチよくわからない。
でも、ここなら、二人で来ても楽しめそうだと思った。
｢行こう｣
彼女の手を引いて、園内へと入っていく。
入り口のところで入場券を買って、そのまま歩いていった。
……そして、入った瞬間、目の前には光の海と形容するに相応しい、美しいイルミネーションが広がっていた。
｢わぁ……綺麗……｣
そう、彼女が呟いた。
穏やかな音楽とともに、刻々とその光り方を変えるイルミネーションに、釘付けになっている。
……その横顔が、やけに綺麗で。
俺は、イルミネーションよりも、彼女のことを見つめてしまった。
すると、不意に俺の方を振り返った彼女が、また不思議そうな顔で、呟いた。
｢……どうしたの、和？｣
｢いや……ちょっと歩いてみよっか｣
……気付かれた。
無意識に見つめてしまったから、彼女が振り返るタイミングを見計らい損ねた。
なんだか急に恥ずかしくなって、なんでもない風を装う。
俺、デートの時、こんなに緊張していたっけな。
久々に外デートをしたせいで、余計にドキドキしている。
それも、こんなデートスポットみたいなベタなところだから、雰囲気にも飲まれているんだろう。
実際、周りはカップルだらけで、それぞれに楽しんでいるように見えた。
彼女の手を引きながら、俺たちは園内をゆっくりと歩き始めた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 295人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なの | 作成日時：2019年12月21日 0時
