▼ ページ17
.
でも、付き合って数年が経った今では、デートもちょっとマンネリ化してきて。
俺も待ち合わせに遅刻してしまうしで、いつしか彼女は、どこか寂しそうな表情を見せるようになった。
最近は専らどちらかの家で過ごすことが多くなって、二人で出掛けたり、なんてことは少なくなってしまった。
お互いにオフィスが近いから、いつも駅前で待ち合わせて家まで行く。
でも、遅れる俺に待ちきれなくなった彼女は、近くの純喫茶で俺を待つようになった。
……申し訳ないな、と思う。
どこにも連れて行ってあげられないし、なんなら最近は、恋人らしいことなんて、指折りで数えられる程度しかしたことがない。
それに、会話も付き合いたての頃と比べると、かなり少なくなってしまった。
……彼女は、どう感じているんだろう。
毎日会うわけじゃないし、話したいこともたくさんある筈なのに。
……だから、今日くらいは、彼女の笑顔が見たい。
そんなふうに柄でもないことを考えて、珍しくデートプランを持ってきた。
｢何か食べよう｣
既に冷めてしまっているであろう、コーヒーカップを手で包んでいる彼女にそう言うと、少し驚いたように俺を見た。
いつもはコーヒーだけ飲んで店を出て、食事は家なり他の店なりでするから、ここで食べていくことはほぼない。
……でも、今日の俺には、プランがある。
｢ほら、何食べる？｣
俺がメニューを広げると、不思議がりながらも、彼女は素直に選び始めた。
……とりあえずここで食事を済ませたら、あとは目的地に向かうだけ。
今日も家デートだと思っているだろうから、多少なりともサプライズ感は感じてもらえるんじゃないかな。
折角のクリスマスなのに、俺が何も考えていないわけないでしょ。
俺も彼女もメニューを選んで、マスターに注文した。
その間も、彼女は不思議そうな顔をしていて。
｢……今日は和の家に行くんじゃないの？｣
｢んー……たまにはさ、どこか行こうよ｣
俺がそう言った瞬間、彼女は目を見開いて、驚いたような表情を見せた。
……ふふ、驚いてる。
こういうことをしてみるのも、いいかもな。
久々に、ワクワクする気持ちが沸いてきた。
世間一般ではベタなことだって、俺たちにとっては寧ろ新鮮だったりするから。
デートらしいデートに連れて行ったら、どんな顔を見せてくれるだろう。
いつもとは少し違う、高揚した空気が、二人の間に生まれ始めているのがわかった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 295人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なの | 作成日時：2019年12月21日 0時
