▼ ページ12
.
｢すごいね……こんなに素敵なお店があったなんて、知らなかった｣
｢そうでしょ。俺も調べるまでは知らなかったんだ｣
……今夜は、俺がエスコートしたい。
そう言って、仕事終わりに、彼女をレストランへと連れ出した。
前から噂には聞いていたんだけど、やっぱりここにしてよかった。
窓から見える光景は、会社から見えるものとは全く違う。
お店自体がビルの高層階にあるから、周りのビルと街のイルミネーションなんかの明かりが、全部見渡せる。
窓の外を、頬杖をついて見つめる彼女が、とても綺麗で。
……俺は、目の前に見えるこの人の横顔を、独り占めできるんだな。
広がる夜景よりも、つい、彼女を見つめてしまう。
あまりにもじっと見つめすぎたのか、外を見ていた視線を俺の方に向けて、なに？って微笑んだ。
｢いや……なんでもないよ｣
｢嘘。今、私のこと見てたでしょ｣
ふふ、と笑う表情は、面白がっている証拠。
……そうやって微笑まれると、かなわないんだよな。
お店は、やっぱりクリスマスということが大きいのか、男女カップルが多い。
でも、中には中高生くらいの子どもを連れた家族連れなんかもいる。
みんながみんな、楽しそうに食事をしていて、やっぱり特別な日なんだ、ということを思い出させてくれる。
彼女も、俺のひとつ歳上ではあるけど、少女のように純粋で、無邪気な笑顔を見せる。
……そこに惹かれたのかな。たぶん。
バリバリ仕事ができてかっこいいのに、ふと見せる表情が、どこかあどけなくて、つい見入ってしまうんだ。
｢……ふふ、潤くん、やっぱり見てる｣
｢ああ……うん、ついね｣
……また、無意識に見つめていたみたいだ。
俺は大人しく認めて、改めて彼女を見つめてみることにする。
｢……なぁに？｣
｢Aさんさ……ちょっと前髪切った？｣
｢うん……！ちょっとだけ切った｣
俺が言うと、子どものように素直に、喜びの色を顔に滲ませる。
……かわいいな。
ピュアで、素直で、嬉しいとか楽しいとかいう感情を、その瞳の色に見せてくれる。
ここまでわかりやすかったら、俺も純粋に嬉しい。
些細なことで喜んでくれたり、ありがとう、と笑顔を見せてくれることが、俺にとっての幸せだから。
少し恥ずかしそうに、でも楽しそうに頬を紅く染めているAさんは、やっぱりつい見つめてしまうほどだった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 295人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なの | 作成日時：2019年12月21日 0時
