嘘と花束【ARS】 Part4 (ページ38)

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「……Aのこういうとこ、好きだよ？」

「これで勘弁してください……」

さすがに、唇にする勇気は出なかった。
でも、じっと待っている松本さんがなんだか可愛くて、何もしないのも申し訳ないから……

それでもやっぱり恥ずかしすぎて、顔から火が出そうなくらい。

「ふふ、ありがとう。……じゃあ、俺からもお礼」

ぎゅっと抱きしめた私の身体を少しだけ離すと、隙を与えないうちに、また唇を重ねた。

……さっきよりも、甘い。
離れた身体を引き寄せるように、背中と後頭部に手が回された。
私はやっぱり、ひたすら受け入れるだけなんだけど……

熱くて、求められている、とわかるようなキス。
それでも、優しくて繊細なのは変わりない。

……私は、堕ちてしまったのかもしれない。
松本さんの気持ちに、素直になれたら、どれだけ良いか。

降ってくる甘いキスに、若干の罪悪感を憶えながら、矛盾した感情も渦巻いていた。

「……A、ごめんね」

「えっ……？」

「忘れてほしい、なんて言って」

唇が離れていくのとほぼ同時に、松本さんが言った。
まだ夢見心地の私に向かって、さらに言葉を繋いでいく。

「そんなのただの勝手だし、Aを傷つけたくないとか言って、一番残酷なことを押し付けようとして……」

抱きしめられると、松本さんの鼓動や体温が、直接伝わってくる。

……松本さんにも、私の心臓の音、聞こえてるのかな。
だんだん火照りを増す身体で、淋しげな声を聞いていた。

「でも、Aが忘れたくないって言ってくれるなら……本当は、忘れないでほしいんだ。俺がAをこんなに好きだ、ってことも」

「……絶対に、忘れません。今日のことは、すべて」

返事をするように、松本さんの胸の中で、小さく呟いた。

……忘れたくない。
ここまで気持ちが揺れ動いたことが、今までになかったかもしれない。

……だけど、私は立場上、正反対の態度を取るべきだった。
想いを告げられたとしても、マネージャーとアイドルという関係性に、何ら変わりはない。

というか、私の場合、状況があまりにも特殊すぎた。

「ずっと、俺が守るから……ずっと、俺の隣にいて」

優しく囁く声に、小さく頷いた私は、罪を重ねたも同然。
自分の気持ちに素直になりたいけれど、二宮さんや櫻井さんのことも考え出すと、無限ループに陥ってしまいそうだった。

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