嘘と花束【ARS】 Part4 (ページ4)

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「別に……何もありませんよ」

「……好きだって言われた？」

……思わず驚いて、反射的に二宮さんの顔を見てしまった。
その表情は、『図星だろ』といわんばかりに、目を細め、にっこりと笑っていた。

「やっぱり……でも、翔ちゃんがそれだけで終わるわけないよね」

「……」

「その沈黙はさ、肯定だって受け取っていいのかな」

……この人、本当に鋭い。
今私が何を言っても、きっと嘘だと、すぐにわかってしまうだろう。

そして、トドメを刺すように、その一言を放った。

「……キスくらいはされた、でしょ？」

面白がっているのか、真剣なのか、わからない。
でも、眼差しだけは、相変わらず鋭い光を保っていた。

そしてその目に、私が映るのを見つける。
……どんな偽りも、今は無駄なのかもしれない。

「……否定しないの？」

「……私が今何と言っても、嘘か本当かくらい、簡単にわかりますよね」

「ま……それが本当だ、ってことは、間違いなくわかったよ」

すると、そう言った瞬間に、瞳からさっきまでの鋭い光が消えた。
代わりに現れたのは、どこか悔しそうな表情。

「やっぱりそうだったか……翔ちゃんなら、そんくらいやりかねないし」

はあ、と思わせぶりにため息をつくと、私の目を、真っ直ぐに見た。

……柔らかな、眼光。
その大きな光に、吸い込まれそうになる。

「……じゃあ、さ。心まで……翔ちゃんに奪われちゃったのかな」

どこか淋しげに、目を伏せる。
……コロコロと変わる表情に、釘付けになってしまう。

上目遣いで、私の表情を伺うように、首を傾げた。

「それは……」

……違う、と言えば嘘になる。
でも、そうだ、というのも、何か違う気がする。

「……正確に言えば、そうではない、っていうか……完全に、ではないというか」

……私、何言ってるんだろう？
仔犬のように澄んだ瞳が、私の言葉を逃すまいと、熱心に視線を送るのがわかる。

……じっと見つめられると、何も言えなくなってしまうのは、私の悪い癖かもしれない。

「じゃ、まだチャンスはある……ってことだよね？」

「……え？」

チャンス、って、何の……

そう、無意識に考えを巡らせようとした瞬間、視界がぐるりと傾いた。

……前にもこんなこと、あったような。
気が付くと、座っていたはずのベッドの上に、押し倒されていた。

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