嘘と花束【ARS】 Part4 (ページ28)

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「今日は誘いに乗ってくれて、ありがとう。じゃあ……行こうか」

「はい、よろしくお願いします」

どこかぎこちない感じもするけど、それがいっそう、私の心臓を高鳴らせる。
助手席のドアを開けてくれて、促されるままに、私はそこに乗り込んだ。
松本さんは、静かにドアを閉めると、運転席へと乗りこむ。

「……なんか、Aちゃんを乗せて運転するの、緊張するな」

「そうですか？……でも、なんだか嬉しいです」

私がそう言うと、少し驚いたように、目を見開いた。
そして、ハンドルに手をかけながら、優しく話し出す。

「ふふ、ありがとう。本当は、運転することだけに緊張してるんじゃないんだけど……」

「え……？」

松本さんが、緊張してる……？
運転は、誰を乗せても緊張するものかもしれないけど、それ以外に緊張してる、ってことだよね？

「……Aちゃんと二人で出かけられるなんて、嬉しいし、やっぱ緊張しちゃってさ」

少し照れた様子で、それでもさらっと言ってのけるから、やっぱり松本さんは……
人の心の掴み方を、知っているのかも。

車は一旦大通りに出ると、そのまま走っていった。

どこへ向かうのかは、まだ予想できない。
ちょっと遠出、って、どこなんだろう？

そう思っていると、車は高速のインターチェンジに来ていた。
……ってことは、高速に乗って行く……？

「ここから結構かかるから、寝ていてもいいよ」

ハンドルを握る松本さんが、私に向かって言う。
でも、私だけ寝るのは、申し訳ないし……

「いえ、眠るわけにはいきません。松本さんが運転してくださっているのに……｣

「いいのいいの、気を遣わないで。俺らよりも休みないだろうし、睡眠時間もあんまり取れてないでしょ？」

「でも……」

「ふふ……Aちゃんのそういうとこ、俺好きだなあ」

「へ！？」

高速道路は意外と空いていて、快調に飛ばしていく。
私はというと、そんな松本さんの言葉に驚きすぎて、変な声が出てしまった。

「だからね。……今日はさ、俺のわがままに付き合ってくれる？」

私の方をちらりと見やって、楽しそうに笑う。
きっと、今の私の顔は、真っ赤になってるはず。
ひとつ幸いなのは、松本さんが運転しているってことだけど……

「……はい」

こう答えるのが、精一杯だった。

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