嘘と花束【ARS】 Part4 (ページ27)

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一通りのことを済ませると、時刻はもう22時に近くなっていた。

……なんか、ドキドキする。
久しぶりに、こんな高揚感を感じたかも。

シャワーを浴びたついでに、私服に着替えたけど……
最近私服を着ていなさすぎて、どんな服を着ればいいのか、すごく迷った。

気温的には、5月中旬だから、夜でも外は暖かい。
悩みに悩んだ結果、ミディ丈のフレアスカートに、軽めのスキッパーシャツ、そこにカーディガンを羽織るという、なんともありがちなコーディネートになった。

……私服姿なんて、この前沖縄で来ていた部屋着くらいなもので。
メンバーにはほとんど見せたことがないから、どこか気恥ずかしい感覚もある。
まあでも、部屋着よりはましか……

そう言い聞かせて、迫る時間を、そわそわしながら待っていた。

……と、その時、手にしていたスマホが、震えた。
一度画面を確認して、耳元へとあてる。

「……はい、もしもし」

「Aちゃん？今、家の前に車つけてあるんだけど、出てこれる？」

……やっぱり、落ち着いた声。心地良い低音が、耳をくすぐるよう。

「はい。今、出ますね｣

カーテンの隙間から、窓の外を見てみると、見慣れない車が一台停まっているのがわかった。

……余計に、ドキドキしてきたかも。
なぜかはわからないけど、息が上がってしまいそうなくらい、鼓動が高鳴っていた。

一旦電話を切って、玄関へと向かう。
いつも履いている黒いパンプスではなくて、数ヶ月前に買って、日の目を浴びなかった新しいピンヒールを下ろした。

……この靴を履いて、出かけられる日が来たんだ。

休みの日に履こうと思っていたけど、そもそも休みがとれないから、丁寧に箱に仕舞ってあるままだった。

……嬉しいな。
これも、松本さんのおかげ。ちゃんと、お礼を言わなくちゃ。

外へ出ると、涼しい風が私を包んだ。

人通りのないアパートの前の道に停まる、黒塗りの車に近づいていくと、助手席の窓が開いた。

「わ……｣

思わず驚いて、立ち止まると、運転席のドアが開かれて……

「Aちゃん」

松本さんが、車の中から出てきた。
昼間とは別の、薄手のロングコートを身に纏っている。ぼんやりと光る街灯と月明かりに照らされると、なんだか様になるなあ……

無意識に見惚れる私に向かって歩いてくると、人懐っこい笑みを浮かべた。

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