嘘と花束【ARS】 Part4 (ページ13)

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「……釣りしてぇな」

「空き時間あったらできるかもよ？」

ぽつりと呟いた大野さんに、二宮さんが軽く返す。
そこに、俺も釣りしたいな、って相葉さんが入っていった。

軽妙な、なんでもない会話でも、なぜだか微笑ましく思える。
南国の美しい海を見て、各々に感嘆の声をあげていると、車はもう港に到着するところだった。

……気持ちがいいくらいの快晴。
車を降りた瞬間、海と空がひとつになっていると錯覚するくらいの、眩しい碧が目に飛び込んできた。

「ここから、船で20分くらいです。すぐ出航するみたいなので、乗船しましょう」

どうやらクルーザーを貸切にしてあるらしく、島に着くまでは安心して過ごせるみたい。
大野さんのマネージャーさんに促されるまま、私達は船に乗り込んだ。

小型のクルーザーだけど、私たちだけで乗るには、少し勿体ないくらい立派。
それに、デッキもあるから、美しい海を一望できる。

全員が乗り込んだことを確認すると、船はゆっくりと港を離れて、沖へ出た。

港から少し離れたところから、船のスピードはぐんぐん上がっていった。
たったの20分で着くってことは、このスピードなら、もっと短い時間で着くかもしれない。

漂う海の香りと、照り付ける日差しが、私の中の非日常を生み出していく。
……だけど、それにしても、暑い。

昨日の反省を活かして、私も半袖のシャツに、薄いカーディガンを羽織っているだけなのに……

「ね、外出てみようよ」

開け放たれた窓の外を見ているだけでは物足りなくなったのか、松本さんがキラキラとした表情で提案した。

5月とはいえ、ここは南国、沖縄。
真夏並みに暑いけれど、折角だから、って、松本さんの言葉に賛成して、みんなでデッキに出てみることにした。

「……ごめん、俺はパス」

どこか、元気をなくした二宮さんが、低めのトーンで言った。

……そういえば、二宮さんは船酔いするって言ってたような。
こういう船でも、揺れるのはやっぱりダメみたい。

相葉さんが、無理すんなよ、って優しく声をかけると、少し落ち着いたように、二宮さんは微笑んだ。

デッキに出ると、爽やかな風が、私たちを包んだ。
潮の流れを見つめて、目を輝かせていたのは、大野さんだった。

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