258 ページ32
.
｢……もしもし｣
『Aさん、お久しぶりです。今、よろしいですか』
｢はい……｣
彼らの『協定』を受け入れてしまった私は、雇い主である事務所の意向に、背く形になった。
だって、私が雇われているただひとつの目的。それは……
『5人を監視すること』
……知らない人たちを見ているだけなら、簡単だと思っていた。
なのに、こんなにも魅力的で、愛おしくて、狂おしいほどに恋焦がれて……
すっかり、彼らの虜になってしまった。
そのせいで、私がこなすべき業務に若干の揺らぎが出始めていることは、自分でも気がついていた。
だけど……
『協定』を受け入れた数日後、事務所から電話がかかってきた。
電話口のお偉いさんは、私に事務所に来るように言った。
……あまりにもタイミングが合いすぎているから、どこか不安感が拭いきれないのだけど……
あの時の会話を聞いていた人は、誰もいない。
そりゃ、楽屋にいたのは、5人と私だけなのだから……
だからこそ、怖いんだ。
なぜ、今呼び出されたのか……私、何かボロを出したんだろうか。
5人が距離を詰めてくるのは、他の関係者がいないところ。
マネージャーさんがいるところでさえ、あからさまには近づいてこないのに……
どうしてだろう。
何かあったから、わざわざ呼び出すんだとは思うけど……
少し不安な気持ちを抱えながらも、呼び出されたからには、出向かない訳にはいかない。
電話があった翌日、私は仕事を早めに切り上げて、事務所へと足を運んだ。
事務所のドアを開けるとすぐに、受付の方に案内され、いつものお偉いさんの部屋に通される。
どうしてもこの雰囲気、慣れないんだよなあ……
ピシッとしたスーツを着て、髪型もピシッと決まってるお偉いさんは、私を見遣り、ニヤ、と笑った。
｢Aさん、今日もお疲れ様でしたね。そこへお掛けになってください｣
｢あ、ありがとうございます……｣
部屋に入ったはいいけど、頭が働いていなかったらしい。
ドアの前に突っ立っていた私は、そう声を掛けられた。
言われるがまま、柔らかな来客用のソファに腰を下ろす。
本当に、ついこの前にあんなことがあったばかりだから……
気を抜く余裕なんて無くて、自分の手もとを見つめているのが精一杯。
……もし、顔を上げたら。
もし、事務所側が、私たちの周りで起こっていることの全てを、把握できているとしたら？
……それが、少し怖いんだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 942人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
akane2942(プロフ) - はじめまして。嵐さんロスで5人の小説を探していたところ、素敵な作品に出会えて1日で読んでしまいました！ドキドキする展開が多く、楽しみながら読ませていただきました。学業等、プライベートを大切に、また更新していただけたら嬉しいです。楽しみに待っています！！ (2021年1月8日 23時) (
レス) id: 869dcd25b4 (このIDを非表示/違反報告)
LKmama(プロフ) - ゆっくり(^^) ご自分のペースで(^^) また読ませていただける日を楽しみに待っています(^^) (2020年10月15日 18時) (レス) id: 3dceac6b69 (このIDを非表示/違反報告)
まっしゅるーむ - 初めまして。たまたま見つけて読ませてもらったんですけど、すっごく面白くて続きが気になります…！時間あるときにまた更新してくださると嬉しいです。更新されたら飛んで見に来ます！ (2020年3月23日 22時) (レス) id: 4b4c4f73c8 (このIDを非表示/違反報告)
さーやん(プロフ) - はじめまして。コメント失礼致します。ひょんなことからこの作品に出会い、1日で最新話まで読破しちゃいました。作品の雰囲気、作者さんの表現力がとても素敵です！続きを楽しみにしております！ (2020年3月5日 10時) (レス) id: b7052756db (このIDを非表示/違反報告)
ゆるる - 一日でぜーんぶ見入ってしまいました…！続きの話早く見たいです。待っています！ (2020年1月26日 18時) (レス) id: 66a8b92992 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なの | 作成日時：2019年12月6日 19時
