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初めて体験する臨場感とワクワク感に、最後まで浸っていられた。
……本当に、面白い。そして、役者さんって、すごい。
私の知っている櫻井さんではなく、完全に役として、そこに別の人物がいた。
エンドロールが流れている間も、上映が終わって、照明が明るくなった後も、その余韻は続いていた。
会場に入っていたお客さんたちが、スタッフさんの誘導で、外へと出ていく。
……私も出なくちゃ。そう思って、オフにしていたスマホの電源を入れ直すと、画面上にひとつのメッセージが届いていた。
『終わったら、楽屋に来て』
上映の始まる前に、櫻井さんから来ていたみたい。
まだ、ここにいる、ってことだ。
一通りのお客さんが出たあと、私は楽屋フロアへと向かった。
ずらりと並んだドアのひとつに、櫻井さんの文字があった。
コンコン、とノックをすると、中から、どうぞ、と声がした。
「失礼します」
室内に入ると、まだ衣装のスーツを着た櫻井さんが、ソファに座っていた。
「……どうだった？」
私に、空いている隣に座るように促しながら、優しい表情で聞く。
……たくさん、言いたい感想はあるけれど。
「とっても、面白かったです。私、こういう映画を見るのは初めてだったんですが……本当に、引き込まれてしまいました」
「ありがとう。その言葉が聞けただけで、嬉しいよ」
白い歯を見せながら、心底嬉しそうに笑う。
そんな表情を見ていると、私までつられて笑みがこぼれる。
「俺も見てたんだよ？」
「映画、ですか……？｣
「うん。ハケた後、暗くなってから、こっそり入って」
だから、まだ衣装のままなのか。
全然気が付かなかった……
少し驚きながら、櫻井さんの目を見ると、笑っていた顔が、少しだけ悲しみを帯びた気がした。
「……ごめんね、さっきのこと、話して」
「いえ……私は全然、大丈夫です。みなさん、びっくりされていたみたいでしたけど……」
「それもなんだけど、ひとりでいたって嘘ついて……本当に、ごめん」
そう言って、目を伏せた。
……そんな姿を見ていると、さっきのモヤモヤさえも、なんだかどうでもよく思えてきて。
「いいんです。ついていい嘘も、あります。私は、誤解も生まれないし、詮索する人も減ると思うし……賢明だったと思います」
……なんて、言ってみたけど。
本当は、少しだけ寂しかった。
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なの(プロフ) - Kenさん» Kenさん、初めまして！嬉しいコメントありがとうございます！！たくさん更新していけるよう頑張るので、応援よろしくお願いします('∀'*) (2018年12月19日 21時) (
レス) id: d783c00f36 (このIDを非表示/違反報告)
Ken(プロフ) - 初めまして。作品を見つけて一気に読んでしまいました 。続きが気になります。更新されるのを楽しみにしてます☆ (2018年12月18日 23時) (レス) id: 6597b5370f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なの | 作成日時：2018年12月6日 19時
