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「では、映画のセリフにちなんで、出演者の皆さんの最近起きた『ありえない』ことを教えていただけますか？」
挨拶も中盤に差し掛かった頃、司会の人がこんな質問を投げかけた。
主演である、櫻井さんに話が振られると、一度考えるような仕草をして、話し始めた。
「まさに今朝……逗子の方に行ってまして、電車で戻ってきたんですよ」
そう言った瞬間、会場中がざわめいた。
司会の方も、驚いている様子。
「いや〜、何年ぶりだろう……寝過ごしちゃって」
その言葉が、トドメを刺した。
報道陣やお客さんはもちろんのこと、共演者のみなさんも声を上げて驚いている。
……そんな一方、私はドキドキが止まらなかった。
それ、言っていいんですか、櫻井さん……？
「品川で降りようとしてたんですけど、目が覚めたら品川が遠ざかっていくところでした」
笑いながら話すけれど、会場内はなおもビックリ。
たまらず司会の方が、質問を挟み込む。
「おひとりで電車に乗られたんですか？」
「もちろんです」
えぇー！？という悲鳴やら歓声やらが入り交じったような声が、背後から聞こえてきた。
……ひとりか、と聞かれて、そうだと言っておけば、誰も突っ込む人はいない。
わざわざ、マネージャーと一緒だった、なんて言わない方がいい、ってことだよね……？
下手に何か言うより、賢明な判断。
……何故かモヤモヤする心を抑えるように、自分に言い聞かせた。
その後も挨拶は続き、メディア用の映像や写真、PRを撮って、30分ほどで終了した。
この後にすぐ上映があるから、報道陣が次々と会場を出ていく。
私はそのまま座って、映画を鑑賞させてもらうことにした。
……ふと、さっきの櫻井さんの言葉が頭をよぎる。
そして、安心しきった櫻井さんの寝顔と、絡ませた指の温度まで、一緒に蘇ってくるような気がした。
……どうして、手を繋いだのか、なぜ一人だった、と言ったのか。
それは、私の想像の範囲にはおさまらなくて。
ぼんやりと考えているうちに、場内は暗くなって、目の前のスクリーンに映像が投写されていた。
約2時間。
その鑑賞中、私はずっと、画面に釘付けだった。
映像の中に出てくるのは、紛れもなく櫻井さんであるはずなのに、そこにいたのは、事件を追う大学教授でしかない。
物語にどんどんのめり込んで、実際に映画の世界で、目の前で見ているようだった。
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なの(プロフ) - Kenさん» Kenさん、初めまして！嬉しいコメントありがとうございます！！たくさん更新していけるよう頑張るので、応援よろしくお願いします('∀'*) (2018年12月19日 21時) (
レス) id: d783c00f36 (このIDを非表示/違反報告)
Ken(プロフ) - 初めまして。作品を見つけて一気に読んでしまいました 。続きが気になります。更新されるのを楽しみにしてます☆ (2018年12月18日 23時) (レス) id: 6597b5370f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なの | 作成日時：2018年12月6日 19時
