・ 太宰の過去(3) ページ32
そんな彼女のようすなんかよりもずっと、
僕は『
近くで見るとなんて美しい光景だろう。
───しあわせそうな死体の表情。
何故か僕は高ぶる気持ちを抑えられない。
「ねぇ…君」
しゃがみこんだ僕は彼女に近寄る。
彼女の目は深い深い漆黒の闇に照らされていた。
「……だ、だめだから、っ…!」
息や声を荒らげる彼女。
僕はそんな彼女の両手を強引に握った。
彼女は青ざめた表情をして、目を瞑る。
´
´
───まぁ、分かってはいたさ。
君のその力は異能力だって。
僕の『愛してしまった』その異能力では
───僕を殺す事ができないんだって。
僕は《異能力》『人間失格』を発動していた。
……触れた異能力を無効化。
この異能で僕は死ぬことができなかった。
恐怖に目を向けないように閉じていた瞼を彼女が開ける前に、僕は彼女を押し倒す。
あぁ………愛してる。
そんな美しい異能を持てることが羨ましい。
自然と零れる笑み。
「………ねぇ、君。その異能力で、
私を殺してくれないかい?」
幼稚なことを呟いた僕は彼女を笑った。
──────
───へぇ、雨宮リイナか。
周りを見ようとするなんて駄目じゃあないか。
君が殺してしまった家族の死体をそんなに拝みたいのかい?
なんて言葉は口に出さない。
「……これは君のためだからだ。
…リイナ、これからは僕の言うことだけを聞いてくれ」
案の定、彼女は不思議な顔をする。
「………どうして?
何で貴方の言うことを聞かなきゃならないの?」
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作者名:kana | 作成日時:2021年8月23日 20時