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『森田さぁーん！』
森田「どしたん？どしたん？」
『･･･ネタがウケへんのです･･･』
森田「ネタが悪いん？」
『私的にはええネタやと思ってますし、星川と話してもええネタってなるんすよ〜！客にだけウケへんのです〜！』
あの頃の私たちは、揺れていた。漫才を始めてから、あんなにウケへんってことがあるんやと言うぐらいウケないことで。
森田「お前のネタがなぁ･･･それに星川も賛同しとるネタが･･･」
『おもろい、とは沢山言われるんすよ？･･･けど、肝心なお客さんにはウケへんし、やっぱりウケへんと意味ないし･･･寄せた方がええんすかね･･･？』
森田「それが出来るほどお前らが上手いとは思えへんけど」
『･･･そうなんすよね･･･、もう手詰まりというか･･･』
私たちは、お世辞にも漫才が上手いとは言えない。それは、今もだ。漫才が上手くないからこそ、手を替え品を替えここまでやって来ている。ただ、この頃は何度も言うように、いわゆる「一番辛かった時期」なので、そう何個もいい案が出てくるわけではない。今振り返ってみると、別にええネタでもないし。
森田「とりあえず、クビにならん程度に踏ん張ってみ。お前はネタ作ってれば大丈夫やろ。星川が何とかするはずやわ」
『そうですか？』
森田「お前はネタ作るのに長けてるし、そもそも人に合わせられるようなネタ作れんやろ」
『そうですわ･･･ほんまに･･･』
森田「今は辛抱の時なんやって」
『･･･また限界になったらかけてええですか？』
森田「おぉ！ええよ！ええよ！」
『多分、すぐでしょうけど』
森田「もっと頑張ろうや〜！」
あ、もう頑張ってるか、と我に返ったように言われた時にちょっとだけ泣きそうになった。この人、近くで見んくても分かってくれてんねやって思ったんやと思う。
森田「無理になるまで頑張っても体壊すだけやで、ほどほどにな」
『はい』
じゃあ今度は飲みで、と切られた電話。こんなでも、頑張れるだけの力を持っている森田さんは、敬愛するしかない。久しぶりにこんなこと思い出した。
『もう少ししたら、胸張って共演出来んのかなぁ･･･』
芸歴コンプレックスは、いつになったら解消されるのかしら。
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-ホット・バタード・ラム-に乗せて→←-マンハッタン-を贈る
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作者名：明烏 | 作成日時：2021年11月24日 8時
