世界を大喜利に変える人 (ページ23)

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『はい、乾杯』

辻󠄀「乾杯。･･･何やかんやでお前とサシってなくない？」

『あー確かに。絶対誰か居った気がする』

同期、後輩、先輩。思えば、誰かが居って辻󠄀と飲んでいた。二人でガッツリってのはなくて、みんなが酔い潰れて、片付ける前に二人で飲むっていうのはあったけど。

辻󠄀「何で家誘ってくれたん？」

『店で飲むのめんどいし、金かかるから』

辻󠄀「じゃあ俺ん家来ればよかったやん」

『うーん、･･･カクテル作ってあげたかったからかなぁ？･･･うん』

あんまりこういう洒落たのを誰かに披露するっていうのもなかったし、たまには誰かに見せたかったという気分だったのかもしれない。

良い感じに酔っ払ってきて、色んな話をした。お笑いの話、音楽の話、そして、ゲームの話。こいつの色恋沙汰には元より私が興味が無い。

辻󠄀「何でも作れるの？」

『まぁ、言われればやけど』

辻󠄀「じゃあ･･･」

「ウォッカギブソン」作って、とハイボールを飲み干した彼にそう言われた。まさかあの辻󠄀がカクテルの名前を知ってるとは思わなかった。

「ウォッカギブソン」っていうのは、ウォッカをベースにドライベルモット、パールオニオンを入れたカクテル。あまり出されたことは無いけど、作り方ぐらいは知っている。

『はい』

辻󠄀「ありがと･･･はい」

『･･･ん？』

差し出したカクテルをそのまま私に寄越す。どういうことだ？

辻󠄀「俺、お前のためにカクテル言葉調べてさ」

『うん』

辻󠄀「これの意味知っとる？」

『え、何？』

辻󠄀「“隠せない気持ち”」

『･･･だから？』

トロンとした目に吸い込まれそうになる。

『おちょくんのもええ加減にせえよ･･･』

辻󠄀「俺、意外と一途やねんで？」

私は、一気に飲み干されたそれを横目で見ながら、目の前の奴にキスをされた。

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