-ウォッカギブソン-を貴女に ページ22
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辻󠄀「今日、飲まへん？」
『珍し。･･･うーん、どうする？私ん家でもええけど』
辻󠄀「そうする」
私の家は、酒とタバコしかない。大袈裟に言って、ではあるが、あながち間違いでもない。近からず遠からず、だ。そんな家やから、そういう意味で男を連れ込めるような家でもない。
『バーみたいやけど文句言わんといてな』
辻󠄀「人の家に文句言わんよ」
家に招くと、辻󠄀は少しウキウキしているように見えた。思えば、元彼以外で男を対一で招いたのは辻󠄀が初めてかもしれない。
辻󠄀「･･･お酒多ない？」
『カクテル作るからなぁ･･･』
辻󠄀「えらいオシャレやしな」
『まぁ、酒と服にしか金つぎ込まんし』
辻󠄀「それ、寂しいな」
『癒してくれるのは、ゲームと酒やな』
私がそう言うと、辻󠄀は、絶対彼氏居らんやろ、と言った。的確な指摘すぎて何かを返そうにも何も出ない。
辻󠄀「え、ほんまに居らんの？」
『到底、居るようには見えんやろ』
辻󠄀「･･･ふーん･･･」
手を洗って、氷を確認する。何個もストックしてあるから大丈夫そう。辻󠄀は酒強いから、何杯飲むか知らんし。
『何飲みたい？作るで』
辻󠄀「うーん･･･とりあえずハイボール」
『はーい』
レモン切らなきゃ。
辻󠄀「お前ん家、俺の好みばっかやな」
『ゲームあるし、漫画あるし、CDもあるからな』
辻󠄀「阪神あれば俺ん家やん」
『生憎、野球には興味ないねん』
部屋でくつろぐ辻󠄀とテキトーに会話をしながら、ハイボールを二杯作る。
『はい』
辻󠄀「ありがと」
テーブルに出来たハイボールとおつまみを置いてあげると、ふわりと笑ってきた。こういうのに世の女は、やれ「ギャップ」だのやれ「可愛い」などと言って、彼に落ちていくのだ。男も女もチョロいものはチョロい。
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作者名：明烏 | 作成日時：2021年11月24日 8時
