傘を持たない僕たちは (ページ4)

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「ねぇ、どこに行くの？」

どこに行けばいいか分かったら、苦労はしねーよ。

「なんか手がかりとかないの？
お父さん、何か言ってなかった？」

「うーん…」

「手紙かなんかは、届いたことない？」

「お父さんから？」

俺がうなずくと、シゲはカバンをあさり始めた。

そして、便箋を取り出した。

「これ。あとは、お母さんが捨てちゃった。」

泣きそうな顔になったシゲに、どうしたらいいのか分からない。

頭を撫でようとして手を頭の上に持っていくと、頭をガードしてしゃがみ込まれてしまった。

「ごめん、叩かないから。それ、見せてみ。」

シゲから受け取った手紙に書かれた住所は、見たことがあっても場所までは分からなかった。

こんなところに、勉強をしてこなかった弊害があるとは…

ググってみると、経路案内の第一候補には飛行機が出た。

だけど、もちろん俺にそんなお金はない。

それに、飛行機には搭乗者名簿が必要だ。

もしシゲの誘拐が今日中に発覚したら、捕まるリスクはかなり上がる。

「電車でゆっくり行くか。」

「電車？」

「そう、電車。」

大人しそうに見えてもやっぱり男の子で、シゲは駅につくと目をキラキラさせた。

スマホで路線を調べ、鈍行列車に乗り込んだ。

「お母さん、いつ頃帰るとか言ってなかった？」

「うん…多分、しばらく帰ってこない。
いっつもそうだったから。」

「そうか。」

シゲの今までの生活には心が痛むけど、今だけはそれがありがたい。

とにかく今は、誘拐がバレる前にできるだけ遠くまで行かないと。

シゲは、物珍しそうに外の景色を眺めている。

その横顔を眺めている、少し和んだ。

もっと、色んな景色を見せてやりたいと思うこの感情は、一体なんだろう？

スマホでニュースをチェックしていると、駅員が車両内に入ってきた。

キョロキョロしながら歩いているところを見ると、何かを探しているようだ。

まだ、ニュースには出ていないけど、もうバレたのか？

いや、シゲの母親はしばらく帰ってこないはず…

逃げることも考えたが、このタイミングで席を立つのは悪目立ちする。

何事も起きないことを願い、下を向いて駅員が通り過ぎることを願った。

「ねぇ、君。お家の方は？」

だがその願いも虚しく、駅員はシゲに声をかけた。