傘を持たない僕たちは (ページ2)

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「お父さんかお母さんは？」

「お買い物。
もうすぐ帰ってくるから大丈夫。」

それはまるで、訓練されたかのような言い方だった。

この子、やっぱり…

「いま、何歳？」

「5歳。」

「一人で留守番して、寂しくないのか？」

「へーき。」

それは、嘘だということが丸わかりだった。

「ホントに？」

「…ほんのちょっとだけ寂しい。」

男の子は、小さく呟いた。

それが、悪いことであるかのように。

その姿が、昔の俺と重なる。

このままこの子を家に置いていちゃ、ダメな気がした。

もしそうしたら、この子は俺みたいに、ロクでもない人生を送るかもしれない。

この子は、まだ間に合う。

それに俺自身、自分の現実から目を背けたくなったのもある。

「寂しいなら、俺と一緒にどこかに行くか？」

発した言葉は、衝動的なものだった。

男の子の目が、パッと見開く。

「…どこかって？」

どこかって、そんな急に言われても…

「お前が行きたいところ。」

「…げ…」

「ん？」

「…しげ。お前じゃなくて」

思い切ったように緊張で固くしながら言ったのは、たかが呼び方のことで、子供って面白いと思った。

「はいはい。
シゲは、どこに行きたいの？」

「お父さんのところ」

…これ、実現可能か？

「お父さん、どこにいるのか知ってるのか？」

「知らない…
お母さんとケンカして、出ていっちゃった」

要するに、離婚して家を出ていった父親に会いたいってことか。

どこにいるのか知らないのに、探せるか？

でもまあ、父親を探してブラブラすれば、現実逃避くらいにはなる。

「分かった。お父さんを探しに行こう。」