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『手越祐也、またもや大活躍！！』
昼飯を買いにコンビニに行けば、嫌でも目に入ってくる新聞の見出しに、俺は一人溜息をついた。
小学校から高校までずっと一緒だった幼馴染。
だけど小さい頃から、親からの愛情、人懐っこさ、頭の良さ等々、俺は自分と祐也との小さな差に気づいていた。
それが、ここまで大きくなるなんて。
夢だったサッカー選手になり大活躍している祐也とは逆に、俺はデザイナーになるという夢を叶えることもできず、進学する頭も金も無く、俺でも採用してくれた引越し業者に就職した。
そんな引越し業者も、腰を痛めて辞めたところだ。
まだ20歳。でも、人生は詰んでいる。
幼馴染でもあり親友の祐也が活躍した記事を見て溜息をついた自分が、心底嫌になる。
弁当コーナーを見て、結局はパンコーナーから食パンを取る。
とにかく、安く腹を膨らませたい。
こんなとき、祐也だったら少食だから楽なのに。
…ダメだ、何考えてるんだろ。
鬱々とした気持ちを抱えながら、アパートへ帰る。
「ご…ごめんなさい！」
…？隣の部屋からか？
この時間、家にいることなんてあんまり無かったからな。
どうせ何かイタズラでもしたんだろうと、煩いと思いながら食パンをかじっていたが、なにやら少しおかしい気がする。
小さな子が泣きながら謝る声と、親らしき人物の怒鳴り声。
それに加え、壁に物がぶつかる音。
それは確かに、俺が小さい頃に聞いたことがあるものだった。
気になって耳を済ませていると、ドアが閉まる音がして、壁の向こうが静かになった。
気づかなかったら、放っておいたのに。
気づいてしまった以上、昔の自分が、そのまま食パンをかじることを止めさせる。
仕方ない。
このままじゃ落ち着かないから、サラッと様子だけ見てこよう。
ノックをしても返事はない。
もしかしたら開くかもしれないと思いドアノブを回せば、ドアはガチャリと音を立てた。
「…だれ？」
部屋の中は、壮絶だった。
そして何より衝撃だったのは、部屋の隅に佇む男の子が、ガリガリだったことだ。
まるで、昔の俺みたいに。
「え…あ…隣の部屋に住んです、増田です。
君は？」
「…かと…し…あき」
「ごめん、聞こえない。」
男の子は、俺に目を合わさずに小声で呟いた。
「かとうしげあき。」
相変わらず目は合わせてくれないが、さっきよりもいくらか声が大きい。
これが、俺らの出会いだった。
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作者名：みかん | 作成日時：2019年7月18日 23時
