4小節目 ページ5
A
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移動の車の中は終始無言。気まずいったらありゃしない。
かと言って話しかけるネタもないし、というか話したくないし。
社長はホテルでいいのになんで私だけ。
自分の立場わかってるのかしら、社長なのよ？
パパラッチだって、社長にも付いてるのにどうして！
「着いたで。」
「え、あぁ……何この邸宅！」
「せやから、俺ん家。」
「ご家族で？私、挨拶とか考えてないんだけど。」
「一人や。ほとんど物置やし、その物置いとった部屋一個開けた。」
「はぁ。さすが幹部様ともなればいい暮らししてるのね。ま、お邪魔するわね。」
生活するのに最低限のものが端に寄せられ置かれた部屋。
色の多い部屋では無いけどむしろそれが怒涛の一日の終わりを告げてくれる部屋だと考えたらむしろ十分すぎる。
趣味の悪い部屋だと笑ってやろうと思ってた分毒気が抜かれる。
「風呂とトイレは突き当たり、飯は使用人らが届けるから"この部屋から無駄に出るな。"ええな。」
「言われなくても分かってる。」
「えーっと？今日は多少の好き勝手は許すけど明日最低限守って欲しい事を通達する。やと、グルッペンから。」
「ここで安全に暮らすためのルールね。あると思った。
……わかったから出て行ってちょうだい、疲れたの。後でシャワーは借りるわ、それ以外は出る気もないから。」
「それが身のためやな。」
一回もこちらに視線をやること無く、元の伝達が書かれているであろうメモを面白くなさそうに見つめながら私に背を見せるコネシマ。
「あ！コネシマ！」
「何や馴れ馴れしいのぉホンマに。分からんことあれば今から来るヤツらに聞け。」
「違うの、おやすみなさい。」
「……は？」
「え？夜の挨拶よ。何？」
「お、おう。……おやすみ？」
「変なの。」
分かりやすく動揺した様子で最後気味の悪いものでも見るかのようにバッチリ目が合ったのにそさくさと部屋を出ていくコネシマ。この国には無い文化なのか、挨拶は。なんてさすがにバカにしすぎているような考えを他所に荷解きをしていたら緊張した様子のお手伝いさんが入ってきたけど「コネシマ様に丁重におもてなしをと。」とかしこまって頭を下げられた。
なんだ、不器用なあの人。
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作者名：ミューゼス | 作成日時：2024年3月5日 14時
