3-2粒目 ページ5
何かわからないけどその瞬間感じた違和感に疑問を持つ前に後ろでエミさんの手元が狂ったようでアワアワと焦ったような声が響いて、何もかもを忘れてしまったかのようにみんなは普通のいつものみんなに戻った。
「脳溶けかよロボロ！ゾムやないんやからしっかりしてくれんと！」
「いやぁうっかりしとったわ、あかんな。」
「せやでロボロ、シャオロンの言う通りや。俺みたいに溶けとったらあかんやろ大先生はくられ先生んとこ……に……」
「……くられ教授何てこの大学いたっけ。」
「あーあかん、溶けとる本格的に。エミさんカフェインキツっいのんとかあらへんのん！」
「へ!?ちょ、ちょっと待ってな……？」
「ゲルダ、こっちに。」
くられ、なんて珍しい呼ばれ方している人なら例えた学部でも噂には聞こえてくるはず。
まぁ、人の噂をあまり気にしないタチだから知らないか、と自己完結しているとグルッペンは私を手招きで呼んでこっそりと耳打ちで楽しそうに話しかけてきた。
「今日、一緒に帰らないか。送らせて欲しい。」
「送るって……私たち家反対方向だよ？いいの？」
「送りたい。そうやな、二人でゆっくり話したいからと言った方がいいか？」
「いいよ、じゃあ待っててくれる？」
「迎えに行ってもいいか？」
「ありがと、待ってるね。」
満足そうに笑うグルッペンに胸の奥がキュンと高鳴る。
それなりの時間を過ごして芽生えた感情は親しみだけではなくって、恋情。
グルッペンが、好き。
そう気付くのも、もしかしたら好き合っているのではと気付くのも、実はそんなにかからなかった。
他から見ても明白だろうにこの人達はたまに冷やかしこそすれそこまで食い入ったように話を聞こうとはしてこない、その気楽さが気に入っているのかもしれない。
この友人以上恋人未満の時期が一番楽しいことは話に聞いていたけれども、こんなに楽しいなんて。
今の私は人生で一番甘いお菓子が似合う生活をしている、最も花盛りを迎えていることは自明だった。
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作者名：ミューゼス | 作成日時：2024年2月6日 0時
