9粒目 ページ16
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最初は本当にただ、ありきたりな授業中の会話ひとつだった。
他の学生よりは勉学に前向きでいまさら流行らないと鼻で笑う学生もいるような閑散とした言語の授業で興味津々と言った様子で受講するその姿が気になって、次第に目で追いかけるようになって、あぁこれが恋というものかと納得するまでに授業が終わるまでの時間はかからなかった。
恋という事象と自分としての対策、初めての経験や感情で理解を深めるのに一週間、行動に移して数ヶ月。
想定通り俺達の関係性は深まっていったが予想以上に彼女にのめり込んでしまった。そう気づいた頃には俺は一般的には許されない手段を実行に移そうとしていた。
「え、人の精神に干渉する薬?病にじゃなくてその様子だと……」
「彼女を完全に俺のものにしたいんです。俺に依存して、俺のそばじゃないと呼吸も忘れて俺を求めてくれるくらい愛してほしい。くられ先生、できるだろ?」
「依存性の問題か……できるかできないかで言ったらできなくは無いけどその女の子に実験も無しに投与するのはダメだよね。うーん……鬱君に頼もっか。」
「それはいい!あいつらにもAを紹介してやろう!俺に繋がる要素を少しでも増やしたほうがいい。」
「程々にね?」
見知った仲のヘルドクターとまで呼ばれるくられ先生に依頼して作ってもらったのは人に依存する薬。返ってきた答えは好意的で科学の発展の為なら動いてくれる先生の存在はこの計画にとても大きかった。
「と、言うことで、や。誰でもいいから女一人に投与してどんだけお前にゾッコンか教えろ。」
「ほーんなんかグルちゃんが入れ上げとる子おるな思てたけどこんな側いそうなゴールが前提にあるんほんま同情するわ。てか俺が見てたらAちゃんもお前のこと好きそうやのにオクスリキメささんとさっさと両思いで大団円じゃあかんのん。」
「それは……無い。」
このラボ呼び出された時から嫌な予感しとってん!と不機嫌そうだった大先生は最近落としたい女がいるからちょうどいいと予想していたよりも案外実害がないだろうと踏んだのか強力的だった。
接種方法が経口のみなのを想定していて良かった。既に各メンバーからは求愛給餌と揶揄されたがそのおかげでAは俺が作るものを何の疑いもなく口にする。
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作者名:ミューゼス | 作成日時:2024年2月6日 0時