6粒目 ページ13
A
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グルッペンが私に毎日お菓子を分け与えてくれるようになったその日から他の友人たちはあんなに足繁く通って顔を合わせていたというのにその回数はまばらになっていって、しまいにはほとんどがあの空き教室にいることがなくなってしまった。
「最近みんな忙しいのかな。」
「そうらしいな、実は俺も会えていないんだ。Aはあいつらに会いたいのか?」
「あんなにたくさん話せるお友達いないからね。グルッペンが紹介してくれた人だからみんなでいるのが楽しいかな。……ん!今日のも美味しい!」
今日渡されたのはカヌレ。本当に彼はパティシエになりたいのかと思うくらいに料理の腕が上がってる気がする。
「良かった。レシピよりも長めに焼いてしまったから焦げたところが無いか気になっていたんだが、大丈夫そうだな。」
「そうなの?凄い美味しいよ。」
「良かった。今日もお茶、いるか?」
「エミさんに教えてもらってたの、今ではすっかりマスターしたみたいだね。さすがだなぁグルッペンは。」
「褒めても何も出て来んぞ。」
「毎日のお菓子が出てくる。そうでしょ?」
「そうやな。Aだけの特権だ。」
そう言ってお茶を差し出してきたその手でグルッペンは私の頭を撫でる。
あんまり女の子にそういう思わせぶりな態度しちゃダメだよ、なんて一回は諌めたけれどもAにだけだと少し耳の端を赤くして答えてくれた。
この微妙にくすぐったい間柄を暮らしてはや数ヶ月。もういいだろうと私から切り出そうとしたこともあったけどどうやらもう少しお相手はこれを楽しみたいみたいで煮え切らない、思わせぶりな態度だけ取ってそれから先に進めない。
どうすれば……
私はもうグルッペンになら……
何をされてもいいと思うくらい惚れ込んでいると言うのに……。
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作者名:ミューゼス | 作成日時:2024年2月6日 0時