1-1粒目 ページ1
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A
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ポーンともうそろそろ聞き慣れたチャイムが鳴って、ザワザワしていた教室内が次第に静かになっていく。
火曜日のお昼が終わった三限目、眠たそうな学生が多く見られるドイツ語の授業。
先生は目を擦る学生には目もくれずただひたすらに教科書のまだ半分くらいは呪文にしか聞こえない例文を読み上げ黒板に書き連ねていく。
「すまない、今どこのページか教えてくれないか。」
「ん？えーっと、ここ。」
「ありがとう。」
扉に近い席に座っていた私に遅れて入ってきた学生が済まなさそうに声をかけてくる。
見るからに地毛の金髪、礼を言ってきた時に微かに見えた赤い目。
随分と派手な見た目な人間もいるもんだと思いながら授業において行かれないようにすぐに黒板へと目を移す。
「それでは、起きているものは近くの人とこの会話を読んで練習するように。……発表して正しく読めていたら二人ともに二点の加点をするから点数に不安があるなら参加するように。」
周りがちらほらと相手を見つけて話し出すと隣の派手な彼からお誘いを頂けたので私たちは向き合う座り直して改めて、と口を開いた。
「俺のことはグルッペンと呼んでくれ。君は……」
「A。面白い名前だね、ドイツから来たの？」
「俺の友人がそう呼ぶだけでな、ドイツ語はからっきし。」
「ふふっ、難しいよね。お菓子のひとつ言うだけで長いことかかるのよね……面白い言葉。」
「好きなんだな、ドイツ語。」
「今まで見た事もなかった言語だからねぇ、嫌いじゃないよ。あほら、ちょうどケーキの話だ。グルッペン君、先読んでみてもいい？」
「あぁ、もちろん。」
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作者名：ミューゼス | 作成日時：2024年2月6日 0時
