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「阪本のリードボロボロにしてやったわ」
「美佳、やること酷すぎ〜」
「それぐらいせんと分からんやろ、調子づいてんねんから」
あの時、私が一言やめてと言っていたら。
阪本「なんで今さら俺らなんかに･･･」
『ごめん！ほんまにごめん！これもエゴやって分かってんねんけど、ごめん！』
中谷「え、何？何？」
『･･･私、あの時･･･阪本に･･･何もしてあげれんかった･･･私と阪本は･･･ダブルリード同盟やったのに･･･』
私と阪本は、同じダブルリード族のオーボエとファゴット。二個上の先輩同士が仲良かったというのもあって、仮入部の時からよく二人で尋問を受けていた。
コンクール時期になって、オーディションが行われた。私はファゴットパートが元から櫻井先輩しか居らんくて、でも二本必要で、経験者やったことから、コンクールメンバーに選ばれた。阪本は、実力で一個上の先輩に競り勝ちコンクールメンバーとなった。阪本の先輩である木崎先輩は、阪本のことをいたく可愛がっていた。多分、普通に上手かったからやと思う。
木崎「お前、俺が仮引退したらトップな。よろしく」
阪本「ぼ、ぼぼ、僕なんかがしてええんでしょうか？！」
櫻井「木崎さんはお前やから頼んでるんよ」
『さかよー、私と一緒やん』
櫻井「二人とも喧嘩するんちゃうで！」
木崎「ほな、しばらく！」
そこからは、地獄やった。それを僻んだ先輩が阪本が丁寧に作ってたリードをダメにしたり、リードケース諸共隠したり、普通に犯罪レベルの嫌がらせをされた。私も、言わないようにと強く言われてた。結局、阪本はそのまま逃げるように辞めていった。それからのオーボエパートはまぁご察しの通りだ。
阪本「お前が悪ないって俺が一番分かってる･･･悪いのは先輩やって･･･でも･･･」
『無理に今戻って来いとは言わない。四月からでもええから･･･戻って来て欲しい･･･』
中谷「なんでそこまでこいつにこだわるんよ？」
『それは･･･』
もう逃げない。
『来年、「華麗なる舞曲」やんねん』
阪本「華麗なる･･･舞曲？」
中谷「ほんまにやるんか？！」
『先生は本気っぽくて･･･あのソロは、阪本にしか吹けんと思うの！』
あのソロを吹いて欲しいのは誰でもなく阪本やから。
阪本「考えさせて･･･行こ」
言うことは言い切った。
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作者名：明烏 | 作成日時：2021年12月21日 23時
