第1話 1-1 ページ3
『私…思うんです…結婚って奇跡だって』
目の前の女性に、そう訴える。
『これだけたくさんの人類がいる中で、出会って、恋をして…たった1人の相手と一生を過ごすことを約束する…本当に幸せなことじゃないですか。お金じゃ買えないんですよ…奇跡って。それなのにお二人の間にはそんな奇跡が起きたんです。だからこそ、強い絆で結ばれたお二人には、特別な式を挙げていただきたいと私は思っています。ここはお二人の夢を叶える場所なんです。いかがでしょうか?』
決まった、と思った。次の瞬間。
新郎「契約しま…」
渡辺「せん!この人と契約すると、あなたの彼氏も取られちゃいますよ」
新婦の渡辺さんがそういう。新郎の男性とは違い、険しい表情をしていた。
「あの…お客様…」
渡辺「全部あんたのせいだからね…」
『渡辺さん…どうしたんですか?』
渡辺「私、彼と婚約破棄になったの」
『えっ?』
渡辺「すぐに契約するなんておかしいと思ってた…あんたがホテルに誘ったんだってね!」
梅「何があったの?」
マネージャーの佐々木さんが私の隣りに座る松村さんに話しかける。
「この前、羽田さんが契約を取った…」
『あれは違います』
渡辺「とぼけないでよ!契約取るために彼をたぶらかしたんでしょ?」
『だから違いますって』
渡辺「問い詰めたら彼、あんたのことが好きだから結婚できないって言い始めてさ。全部あんたのせいだから!」
何度言ってもこうなった女性は駄目だ。そう瞬時に悟った。私の経験上、こういう女性はこっちが下手に出たら駄目。
『ふっ…あはははっ…しょうがないじゃないですか、向こうが勝手に惚れてきたんですから。私に責められてもねぇ…』
渡辺「何よその言い方…」
『事実なんで』
渡辺「ちょっと人よりかわいいからって何なの!?」
『すみません、ちょっと人よりかわいく…』
渡辺さんが私にお茶をかけてきた。めちゃくちゃ熱い。
『うわっ…あっつ!』
警備員「お客様…お客様」
渡辺「離してよっ!」
警備員「お客様…」
渡辺「調子のんじゃないわよ!」
渡辺さんが警備員に連れていかれる。そんな後ろ姿をマネージャーと松村さんと私と三人で眺めていた。
『せめて水にしてよ…』
ほんと、勘弁してほしい。
内心ため息をついた。
142人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:なな姫 | 作成日時:2023年6月2日 22時