理想の人は俺様若頭 (ページ1)

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第1話ページ1

“素敵なお嫁さんになる”

それは、女の子なら誰もがみる夢。

だけど現実はそう甘くない。

そう思っていた。

貴方と出会うまではーーー。

『お疲れ様〜』

「お疲れA。今日も激務だったね」

『ほんとだよ〜。あのクソ店長！全部私に仕事押し付けて！』

「それだけアンタが頼りになるってことよ」

行きつけの居酒屋で友達と愚痴を言い合う。それが小さな幸せだった。神田A。今年で30になる。職業は飲食業。レストランで働いてもう7年近く。

「あ、そうだ。私6月に結婚するんだ」

『嘘！おめでとう〜！』

「ありがとう」

この子は高校生からの友達・安藤美希。サッパリとした性格で、曲がったことが大嫌いな彼女はいつも芯が通っていた。そんな彼女が結婚するらしい。

『良いな〜。結婚か。相手は？』

「私達が新人の時にさ、指導してくれた男の人覚えてる？」

『あぁ、……確か、薮さん、だっけ』

「そうそう！その人！」

『え、嘘。薮さんと結婚するの？』

「うん！」

薮さんは、私達が新人の時に色々と指導してくれた人。とても優しくて気さくで明るくて。女性にも男性にも、まさに老若男女問わず人気だった。美希曰く、2号店オープンした際に美希がヘルプに行って、その時に再開。そして連絡先を聞いて今に至るそうだ。

『あー。私その時風邪引いてたからなぁ……』

「その事話したら薮さんがAのことめちゃくちゃ心配してたよ」

『マジ？』

今度顔出さないとな。薮さん、とても良い人だから美希にピッタリ。お似合い夫婦になりそう。

『結婚式いつ？』

「6月18日。式場ももう決まってるんだ」

『へぇー！』

そのあと他愛ない会話をして居酒屋を出た。

『じゃあね、美希』

「また明日ね！」

美希と別れ、一人帰路に着く。結婚か。羨ましいな。私には縁が無いもの。美希以外の友達も、どんどん結婚していく。取り残されている感じがして、私はもう一軒、行きつけのバーに立ち寄った。