喜多見チーフとの日常

●風邪(喜多見チーフver) ページ23

喜多見「ゴホッゴホッ………」

『大丈夫ですか？』

喜多見「すみません、………ゴホッゴホッ」

『………、』


自分の体が熱いのが分かる。風邪を引いたんだ。


ピピッピピッ……


『39.5度………。結構高いですね……アイスノンと、……ゼリー買ってきますね』

喜多見「すみません………」

そう言い、Aさんは部屋を出て行く。部屋には俺1人。頭が朦朧とするのか、景色がぼーっとなる。


こう言う時は、幼い頃を思い出す。子供の頃の記憶。母が俺のそばで一日中看病してくれていたあの日。


ーー早く良くなりますよーにーー



ーーいたいいたいの、とんでけ〜。……なんてねーー


ーーもうすぐお兄ちゃんになるのよーー


そう言っていた。


俺の母親。



優しくて、暖かくて。



Aさんみたいな、優しい人だった。



ーー今、幸太の好きなもの作ってあげるからねーー


Aさん。



喜多見「ゴホッゴホッ……」

『ただいま、幸太さん。お粥作ったのですが……食べれますか？』

喜多見「……いただきます」

体をゆっくり起こす。Aさんがお粥を冷ましてくれる。

『はい、どうぞ』

喜多見「…………、美味しい」

『お粥食べて、お薬飲んで、ゆっくり休んでください。早く良くなりますように』

喜多見「………、」

『幸太さん？』

喜多見「すみません………母親を、思い出して………」

『幸太さんの、お母様………』

喜多見「小さい頃の、夢を見ました。俺は風邪を引いて、今みたいに“早くよくなりますように”と言ってくれて………」


『そう、……ですか』


喜多見「優しくて、暖かくて、ひだまりみたいで……Aさんみたいな、人でした」


Aさんは、俺の言葉を黙って聞いている。銃乱射事件で俺と涼香を庇って亡くなった両親。


悔しかった。


悲しかった。


でも、俺は兄ちゃんだから、強くなければいけないから。

喜多見「………、俺は本当は、弱い人間なんです。涼香がいないと何も出来なくて。Aさんがいないと、俺は、生きていけない………」


『幸太さんは、弱くなんかありません。いつも私を助けてくれます』

喜多見「俺は、………貴女に、迷惑かけてませんか？」

『いいえ。ちっとも。だから、早く良くなってください』


子供をあやすように


Aさんはベッドの掛け布団を優しく叩いた。


俺はまた、深い眠りについた。


※ふぅさんからの2個目のリクエストです！ありがとうございました！

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