17.19 ページ31
それから程なく、禰豆子を入れた木箱を背負ってやって来た善逸に、簡単な状況説明をした。しばらく放心したような表情で杏寿郎を見つめていたが、やがてぼそりと呟いた。
善「汽車が脱線する時……煉獄さんがいっぱい技を出しててさ、車両の被害を最小限にとどめてくれたんだよな」
善逸の言葉に、Aは頷く。
炭「そうだろうな……」
炭治郎が俯いたままそう呟く。
善「死んじゃうなんてそんな……ほんとに上弦の鬼が来たのか?」
炭「『うん』」
善「なんで来たんだよ上弦なんか……。そんな強いの?そんなさぁ………」
善逸の声が震える。二人はまた“うん……”と力無く返事した。悔しくて悲しくて、不甲斐なくて……。二人は隊服の上から両膝をギュッと握った。
炭「悔しいなぁ……。何かひとつ出来るようになっても、またすぐ目の前に分厚い壁があるんだ。凄い人はもっとずっと先の所で戦っているのに、俺はまだそこに行けない」
『………っ、』
炭治郎の言葉に、ボロボロと涙が溢れる。
炭「こんな所で躓いているようじゃ俺は……、煉獄さんみたいに、なれるのかなぁ……」
目の前の亡き人は、優しい笑みを浮かべているようだった。Aも炭治郎に続き、“私だって……”と呟く。
『私だって……、どんなに呼吸を極めても、救けたい人を救けられないようじゃ、強くなった意味がない……っ!!』
善「Aちゃん……」
『こんな所で躓いてるなんて……師範や煉獄さんや不死川さんみたいな柱に、……なれるの……?』
善「うっ、うっううっ、」
善逸が隊服の袖で顔を覆い、押し殺した声で泣いた。
伊「弱気なこと言ってんじゃねぇ!!」
無言で俯いていた伊之助がそう叫んだ。二人は思わずハッと顔を上げる。伊之助の両肩がわなわなと震えていた。
伊「なれるかなれないかなんて、くだらねぇこと言うんじゃねぇ!!信じると言われたなら、それに応えること以外考えんじゃねぇ!!死んだ生き物は土に還るだけなんだよ!べそべそしたって戻ってきやしねぇんだよ!悔しくても泣くんじゃねぇ!どんなに惨めでも恥ずかしくても、生きていかなきゃならねぇんだぞ!!」
伊之助から溢れ出る涙に、その声に、二人は更に泣いた。
善「お前だって泣いてるじゃん。被り物からあふれるくらい涙出てるし」
伊「俺は泣いてねぇ!!」
善逸の指摘に伊之助が泣きながら頭突し、善逸はその場に倒れた。
伊「うわあああああ!!こっち来い!修行だ!!」
『うっ、うっ……』
伊「わああああああ!!」
伊之助のギャン泣きが、辺りに木霊した。
710人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ななこ(プロフ) - ミアさん» コメントありがとうございます!ドラマCDの胡蝶姉妹、良い話ですよね(泣)分かりました!書かせていただきます! (2022年1月31日 22時) (レス) id: f3c05740c2 (このIDを非表示/違反報告)
melody(プロフ) - はじめまして!読ませて頂きました。続きがとっても気になります。更新楽しみにしてますのでよろしくお願いします。 (2022年1月31日 21時) (レス) @page38 id: 648912d438 (このIDを非表示/違反報告)
ミア - ドラマcdで胡蝶三姉妹のような宇髄家の過去の日常をリクエストします! (2022年1月31日 21時) (レス) @page38 id: baa6bfc0d1 (このIDを非表示/違反報告)
ななこ(プロフ) - 月の舞さん» コメントありがとうございます!キメツ学園はいつか書こうかな、と思ってたので、番外編みたいな形で書かせていただきます!これからも応援よろしくお願いします! (2022年1月31日 19時) (レス) id: f3c05740c2 (このIDを非表示/違反報告)
月の舞 - ななこさん» 無限列車編 終わりましたね…。いよいよ遊郭編か、楽しみです‼️リクエストいいですか?キメツ学園編も見てみたいなぁ〜。遊郭編の後でも構いません💦 更新頑張ってください‼️応援してます (2022年1月31日 12時) (レス) id: 6295bdffb6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ななこ | 作成日時:2022年1月12日 14時