泣き虫継子 弐【宇髄天元】

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”起きて……！お願い起きて！攻撃されてる。これは夢なの！目覚めて！！“

『(そうか、そうだ私は……汽車の中だ！)』

自分の幻にさとされ、Aはようやく己が置かれている状況に気付き、顔付きが変わる。

”お願い……！起きて戦って……！！戦って……！！！“

幻がそう叫ぶも、襲ってきた衝撃波により引き離されてしまった。

『ーーーっ！？』

暗闇の中で目を開ける。


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沙苗「あらA。頬にご飯粒がついてるわよ」

目の前に広がる光景は客車内ではなく、住み慣れた自分の家だった。母・沙苗がご飯粒を取ってくれるのを、父・正孝は微笑ましく見つめる。

正孝「そうだ。今度の日曜浅草に行くか」

沙苗「良いわねぇ！ちょうど和裁の糸が足りなくなって来たから、買いに行こうと思ってたのよ」

沙苗と正孝が幸せそうに笑う。

『(だめだ。目覚めてない。夢の中だ)』

Aは焦燥感から息を荒くした。

こうしている間にも、炭治郎達や汽車の乗客が攻撃されているかもしれない。

『(どうすれば出られるの？折角夢だと気付いたのに……。どうすれば良いの？)』

夢の中でAは頭を抱えた。

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一方現実世界では、炭治郎・伊之助・善逸、そして杏寿郎も夢の中にいた。炭治郎の叫びに答えるように、箱の中にいた禰豆子が出て来た。

炭「『起きないと……』」

額に脂汗をかきながらAと炭治郎がそう呟く。杏寿郎はおさげ髪の少女の首をしめ、必死に理性を保っている。

Aはと言うと、髪を高く結い上げた女性と手首を紐で繋がれていた。

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沙苗「A。行くわよ」

『あっ、えっと……』

沙苗の言葉に戸惑うA。沙苗と正孝はそんな愛娘を不思議そうに見つめる。

『ごめん、ちょっと急用思い出して……』

正孝「急用？どうした？」

『えーっと……』

どうしよう。どう言い訳すれば。正孝がAにゆっくり近付く。それに対してAは少しずつ後ずさる。

すると

宇”A！“

ここには居ない天元の声が聞こえた。Aは空を見上げる。目覚めようとしているのだ。現実世界の自分が。

ここから離れなければいけない。

『(ずっとここに居たい。ずっとお母さんとお父さんと幸せに暮らしていたい)』

鬼に殺されてしまう両親が、Aの事を見つめる。

『お父さん。お母さん。私を育ててくれて……、愛してくれてありがとう』

沙苗／正孝「「A？」」

『さようなら。ありがとう』

そう言い、Aは泣きながら二人の側を離れた。

何度でも言うよ。

声の限り。

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