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杏「うまい!うまい!うまい!」

『…………、』

杏「うまい!」

Aと杏寿郎は、任務のため列車に乗っていた。杏寿郎は列車の中で牛鍋弁当を、Aはシュウマイ弁当を頼んだ。弁当は確かに美味しかった。だが杏寿郎は、一口食べるたびに「うまい!」と己の感想を述べるのであった。

そして杏寿郎のところには弁当箱が何個も積み重ねられていた。

『はぁ………』

杏「うまい!」

『杏寿郎、少し静かにしなさい』

杏「うまい!うまい!」

この男は人の話しを聞かない。Aは外を見た。駅には人がたくさんいた。老若男女。列車の中も平穏そのものだ。

『(鬼なんて、ホントにいるのかしら)』

ガタン、

列車が動いた。長い長い夜の旅の始まりだ。

『杏寿郎。少し席離れるから。ここに居てね』


杏「うまい!」

分かったのか分かってないのか。Aは席を立った。汽車の中を探索しに行くのだ。この車両は八両編成。前方に石炭が積まれている。不審な点は一切ない。

乗客は200人ほど。鬼が出た場合、果たして2人で200人の乗客を守りながら戦えるのか。だとしたら、どのような作戦が良いのか。相手がもし十二鬼月だとしたら、階級はどのくらいか。血鬼術は何か、など。

未知の鬼。十二鬼月。乗客を守りながらの戦闘。

『(………この列車に鬼が出る。このことを頭に入れておく。考えながら任務遂行)』

杏寿郎もいるのだ。2人で力を合わせて戦えば良い。Aはそう思い、踵を返した。

『あら。炭次郎、伊之助、善逸じゃない』

炭「稲妻さん!」

伊「ぬお!雷女!」

善「だから、Aさんだって言ってるだろ!」

自分の席に戻ると、炭次郎、伊之助、善逸が席に座っていた。杏寿郎の隣に炭次郎が座り、こちらを見ている。

炭「お久しぶりです!」

『久しぶりね』

杏「Aさん!何処に行っていたんだ!」

『だから、席離れるって言ったじゃない』

杏「そうか!」

はぁ、とため息をつき、Aは炭次郎の前に座った。Aの横には禰豆子が入っている箱が置かれていた。

炭「すみません。そこに置いてしまって」

『良いのよ。それより、あなた達はどうしてここにいるの?任務?』

炭「はい。鎹鴉からの伝達で、無限列車の被害が拡大した、現地にいる煉獄さんと稲妻さんと合流するように、と命じられました」

炭次郎は背を伸ばしてそう答えた。

参→←無限列車 壱



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作者名:ななこ | 作成日時:2020年12月28日 16時

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