あの時の。 ページ9
『(今、一体何時………?)』
Aが潜入して4ヶ月。だがあの日、Aは蕨姫に捕らえられてしまった。今Aがいるのは蕨姫の部屋にある狭い空間。
押し入れにいた。蕨姫の押し入れは改造されており、布団を置く台が外されていた。そこにAは帯で拘束され、更には声も失った。
喋れなくなってしまったのだ。あの時。もう一匹蕨姫の他に鬼がいた。その時にやられたのだ。相手の血鬼術によって。
”血鬼術・声帯消滅“
『(声帯消滅………、厄介な血鬼術ね)』
帯はAをぐるぐる巻きにし、両手両足をも拘束している。身動きがとれない状況だ。
『(やはり、蕨姫は鬼だった。この事を天元に伝えなければ……っ!!)』
どうにかして、天元に伝えないと。柱なのに不甲斐ない。だが押入れの中から音は漏れないものの、外の音はよく聞こえる。
今会話しているのは、蕨姫と女将のお三津。お三津は言った。いじめやそう言うのは度を越してる、と。庇いきれない、と。すると蕨姫は態度を変えた。なおもお三津は続ける。
「アンタ……何者なんだい。アンタもしかして、人間じゃ」
『(女将さん………っ!!)』
「ない」
フッと2人の声が外に消えた。そして……
蕨「さよなら、お三津」
ドン
「キャァァァ!死んでる!」
「落ちてる!誰!?いや……っ!女将さんじゃないの……っ!」
『(女将さん……っ、助けられなくてごめんなさい……!)』
Aはお三津を思い泣いた。潜入だと言うのに、優しく接してくれたお三津。助けたかった。こんな姿じゃなければ。悔しい。近くにいたのに。
?「調子はどうだ?」
蕨「無惨様……っ!」
と、部屋の空気が一気に重くなった。それと同時に聞こえた男の声。蕨姫と思われるその声は歓喜の声をあげる。
『(この男……っ!この気配、間違いないわ……っ!)』
Aはこの声に聞き覚えがあった。
“あ、すみません………”
“大丈夫ですか?”
日本橋に愈史郎と珠代に用事があり、帰る途中で会った男性。こいつが、鬼舞辻無惨。
無「そう言えば墮姫。美しい女を一人捕らえたそうだな」
蕨「はい、無惨様!押入れにおります!」
『(………っ!)』
すると押し入れが自動で開いた。Aの姿があらわになった。目の前には鬼舞辻無惨と、“墮姫”と呼ばれた鬼。
『(どうする。このままじゃ……っ!)』
無「やっと見付けた……私の美しい女……」
そう言いながら、無惨はAに近付いた。
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fruit - 作品に文句を付けている訳では無いんですけど、桑島さんって、お亡くなりになられていませんでしたっけ。 (2021年8月29日 7時) (レス) id: 80d0b24791 (このIDを非表示/違反報告)
李猫(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても面白かったです。 (2021年2月17日 9時) (レス) id: 893699292a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななこ | 作成日時:2020年12月25日 20時