接近 ページ5
『………、』
“蕨姫花魁のもとで?”
“はい。蕨姫花魁は私の憧れなので、是非蕨姫花魁のもとで働きたいです。ダメですか?女将さん”
“………、まぁ、アンタが良いなら構わないよ。でも、もし蕨姫花魁に何かされたら、すぐアタシに言いな”
“はい!ありがとうございます!”
『(ごめんなさい、女将さん)』
嘘も方便、とはこのことを言う。Aは今、蕨姫花魁がいるであろう日の当たらない北側の部屋の前にいる。そこはとても暗くて静かな場所。昼間の時間帯も日が当たらない。
鬼が棲むにはちょうど良い場所だ。
蕨「あら。アンタがアタシのもとにつく”旭”かい?」
『………っ、!』
静寂なこの廊下に、重い女の声がした。Aは背中に冷や汗が流れるのを感じた。Aは動けなかった。静かすぎる音。
重い音。今までに感じたことのない、残酷な音。この音………鬼。しかも、上弦の鬼。
『(………、落ち着け。落ち着け私。今、私は”旭“でしょ。顔を作りなさい)……、はい。蕨姫花魁』
蕨「へぇ。随分整った顔立ちしてるじゃないか。女将さんから聞いてるよ。アタシに憧れてるんだってね」
『はい。蕨姫花魁みたいな美しい花魁になるのが私の夢です。なので、どうか蕨姫花魁のもとで働かせてください』
蕨「良いよ」
蕨姫花魁は機嫌を良くしたのか、旭を快く受け入れた。
……密着完了。あとは蕨姫花魁がボロを出せば。彼女が”鬼“だと言うことを証明出来れば。”音“だけじゃ分からない。
何か証拠を掴まなければ。
『………あの、蕨姫花魁』
蕨「なんだい?」
『蕨姫花魁は、いつからここに?』
蕨「……どうしてそんなことを聞くんだい」
『私の憧れなので、知っておきたいと思って』
蕨「別にアンタには関係ないだろ。さっさと仕事しな」
『………、はい』
やはり。一筋縄では行かないか。
だが。彼女の近くにいれば、何か分かるかもしれない。
気配を消せ。己が鬼殺隊の柱だとバレないように。遊女を演じろ。
それが。鳴柱・稲妻Aに課せられた使命だ。
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fruit - 作品に文句を付けている訳では無いんですけど、桑島さんって、お亡くなりになられていませんでしたっけ。 (2021年8月29日 7時) (レス) id: 80d0b24791 (このIDを非表示/違反報告)
李猫(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても面白かったです。 (2021年2月17日 9時) (レス) id: 893699292a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななこ | 作成日時:2020年12月25日 20時