No.14 ページ16
『(早く帰ろ)』
Aはすぐにでも着替えて、帰ろうとしていた。
「大丈夫？保健室、ついて行こか？」
声が聞こえた方を見ると、ボール投げで∞の記録を出した無重力個性の女の子と、ボール投げで指の負傷と引き換えに超人的な記録を出した緑谷が2人で話していた。
2人に近づき、緑谷の青紫に変色した指を見つめてAは言った。
『怪我した指、見せて』
緑谷の指を、痛くないように優しく握り、心の中で呟く。
『(アザゼル、治癒力を増強)』
すると緑谷の指は名前の個性の靄に包まれ、ゆっくりと傷は消えていく。
緑谷は怪我が治った指を見て驚く。
「…な、治った！？」
『でも外傷と痛みしか消してないから、内側の筋繊維とかはまだぼろぼろ。指の骨も治りかけ。だから、リカバリーガールの所に行った方がいいよ』
冷静にAが答えると、緑谷は興奮したように言った。
「あ、ありがとう！！凄いよ、二階堂さん！個性の「汚染」ってそんなことまで出来るんだね！」
「...二階堂さんの個性の靄ってなんだろう？明らかに水分ではないし、そもそも空気中に広がるし、相手を操ることもできるし、自分の身体能力も自由に上げられる。ほぼ無敵状態だけど、どこがキャパオーバーになるんだろう？いや、そもそも...」
と、緑谷はブツブツと呟きだした。
緑谷の隣にいる女の子まで、キラキラと目を輝かせている。
「ほんま、すごいなぁ！！あ、私“麗日お茶子”！よろしくね！」
『...私は“二階堂A”。あ、ごめん。私もう帰んなきゃだから、ばいばい』
あまりにも冷たい返答だっただろうか。
しかしAには早く帰らなければならない理由があった。
治癒に力を使ったことで体の調子が変わってしまったのだ。
＿気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。
「A、ねぇねぇ、A」
耳にこびりつくような、鬱陶しい声がする。
Aの頬に大きな青紫色の呪詛が発生する。
動悸がいつもよりも不安定になる。
閉じ込めていた理性が崩壊していき、Aの欲望が広がる。
＿＿死にたい、殺したい、消えてなくなりたい。
『(…あぁ、やばい。暴走しそう。早く帰って、落ち着かなきゃ)』
Aは体操服から制服に着替え、急いで家に向かった。
『(...また嘘ついた。ごめんね、緑谷君、麗日さん)』
治癒なんてするんじゃなかった、なんて一人で後悔する。
Aの個性は、万能ではない。
段々と人間ではなくなっていく、厄介な個性だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 96人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
すみれ汁 - ささくれさんコメントありがとうございます！面白いと言ってもらえてとても嬉しいです！！これからもがんばりますね！ (2018年8月27日 22時) (
レス) id: 7a4e0b7ca5 (このIDを非表示/違反報告)
ささくれ(プロフ) - すみれ汁さん» すごく面白いです〜！！面白すぎてもう続きが楽しみです！！更新頑張ってくださいー！！ (2018年8月25日 17時) (レス) id: 77996c6491 (このIDを非表示/違反報告)
すみれ汁 - さーとうさんコメントありがとうございます！これからもいい小説が書けるように頑張ります！ (2018年8月9日 20時) (レス) id: a69c838f60 (このIDを非表示/違反報告)
さーとう - 更新楽しみにしてます！頑張ってください(о´∀`о) (2018年7月24日 12時) (レス) id: afcde5e08d (このIDを非表示/違反報告)
すみれ汁 - コメントありがとうございます！(*´ω｀*)これからも頑張ります (2018年6月10日 7時) (レス) id: 57b0dc252f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：すみれ汁 | 作成日時：2018年4月30日 23時
