アオゾラペダル【S.S M.J】 (ページ3)

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季節はいつの間にか
夏になっていた。
夏になると、雑誌撮影も
外でやることが増える。

今日も雑誌撮影の場所へと
メンバー全員を乗せた、マネージャーの
車が向かっていた。
メンバーはわたしを除いた8人で
楽しそうに盛り上がっていた。

マネージャーがいるから、
悪口とかは飛んでこなかったけど、
目が合えば睨まれるので、
わたしはずっと窓越しに
横浜市内の風景を眺めていた。

車は撮影場所にグングン近づいている。
それにつれてわたしは
窓に手をついて、じっと景色を見つめる。
目に映るすべての建物は木々が
すごく懐かしく思えた。

A「懐かしいなぁ･･･」
誰にも聞こえないように呟いた。
きっと、何年経っても忘れないだろう。
あの、淡く切ない青春の思い出を。

撮影場所は、デビューする2年前
20歳の時に、BBQや花火をした
あの場所だった。
5年経ったくらいでは、流石に何もかもが
変わっていなくて
とても懐かしく思えた。

初めて心から好きになって
好きで好きで仕方なくて、
切羽詰まるくらい好きになった人に
告白をして、振られたなぁ。
線香花火が落ちたと同時に、
耐えきれなくてしゃがんだまま大泣きしたっけ。
隣にいた夏菜子が
ずっと、頭を撫でてくれたのも
よく覚えてる。

わたしは1人、その場に突っ立って
佇んでいた。
凜香ちゃんがわざとぶつかり、
舌打ちをしたのにも気づかないくらい
あの思い出の余韻に浸っていた。

まさか、「雑誌撮影の仕事」として
この場所に来るなんて思わなかった。
あの5人は今も、あの場所にいるのかなぁ。
マネージャーに許可を得て、
ゆっくり歩き出した。
濃い青のスカートが、風に乗って
ふわっと靡く。

景色を眺めながら
ゆっくり歩いてたどり着いたのは
あの日わたし達が作り上げたガレッジ。
シャッターの上には、わたし達が作った
「AOZORA」の文字がまだあった。

そっと気づかれないように覗いた。
そこにはわたし達と青春を共にした
あの5人が楽しそうに談笑していた。
初めて切羽詰まるくらい好きになった
櫻井翔くん。
あの時よりもさらにかっこよくなって、
笑顔もキラキラしてて、爽やかだった。

わたしの気持ちに気づいてたのか
いつも背中を押してくれた
松本潤くん。
あの時の尖った雰囲気の面影は消えて
大人っぽくなっていた。

あまりにも懐かしい気持ちで
思わず笑みがこぼれた。