第七話 ページ7
「…出よ、歌仙兼定」
そう唱えた瞬間。眼前の刀から眩い光が溢れると共に、ぶわりと桜の花弁のようなものが辺りに舞い上がった。思わず眼を閉じ、守るようにぐっと腕を顔の前にやる。えっ何こんな激しいの？と内心焦りが募る。想像してたものの倍以上に眩しかった。
「…何を隠しているんだい？」
目の前を腕で覆ってしばらく。頭の上から聞き覚えのない声が降ってきた。男の声である。
恐る恐る腕を下ろしてみると、和の装い全開の藤色の髪をした見知らぬ人が立っていた。成る程、これが刀剣男士。結びつくまでにかなりかかったが、その間ぽかんとしている自分を見て彼方の方が先に事情を察したようだった。
「成る程、君が僕の主というわけか。僕は歌仙兼定。風流を愛する文系名刀さ。どうぞよろしく」
「…Aと申します。不束者ですが…」
「…そう遜らなくとも」
苦笑した様子の見た目麗しいその人は、やはり目の前にあった刀が人の形をとったそのものらしい。風流を愛するというが、果たしてこんな若輩で主人が務まるのか。素直に不安だったところを笑われると、なんとも言えない気分になる。
そんな自分を他所に、歌仙と名乗った男はきょろきょろと周囲を見渡しているようだった。
「随分と閑散としているが…もしかして此処にいるのは君だけなのかい？」
「…一応、管狐もいますが」
「成る程、一人と一匹というわけだね」
否定してこない辺り、やさしい人なのだろうか。いや、そもそも人なのだろうか。定義上は人ではなく霊…否、神や妖者に近いと思うのだけれど…
再びうんうんと考え込みそうになったのを察したのか、「いや、気にしなくていい」と救いの手を差し伸べてくれる辺り、矢張りどこかやさしいのだと結論がついた。
「僭越ながら、本日から審神者として勤めを始めた身の上でして…その…」
「ああ。なんとなく刀でいる間に小耳に挟んだような気もするよ」
聞こえるのか。刀の状態で。
素直に思ったのが顔に出ていたのか、再び「腐っても神と名がつくだけあるだろう？」なんて笑顔を返された。違うそうじゃない。そういうことを言っているのではない。
「で、僕を呼び出したからには、何かしら用件があってということだろう？」
「…ええ、っと」
「…まさか、何をするとも聞かされていないわけじゃないだろう」
そのまさかです、なんて素直に言えるわけもなく。
助け舟を求めて目を向けたこんのすけはくりりとした瞳で見返してくるばかりだった。
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羅胤(プロフ) - 黎明さん» 黎明さん、コメントありがとうございます！まさかこんなに期間が空いてる中、待っていただけていたとは…恐悦至極と同時に、大変申し訳ないようにも…（ううむ）改めて更新に励ませていただきますので、これからも何卒よろしくお願いいたします。 (2021年4月24日 2時) (
レス) id: 37cf65dc3f (このIDを非表示/違反報告)
黎明(プロフ) - 初コメ失礼します！！更新ありがとうございます！初めてこちらの作品を読ませて頂いた時から更新されるのを楽しみにしていました！！これからも応援しています！ (2021年4月23日 23時) (レス) id: 6e1910104e (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - いつも更新楽しみにしています！ ついに殿堂入りされたんですね！ おめでとうございます！！ これからもおからだに気をつけて、頑張ってください！ (2020年12月6日 21時) (レス) id: 1f4e240a3c (このIDを非表示/違反報告)
ﾊﾝﾃｽ@読専(プロフ) - 羅胤さん» そうなんですね!私も夢主ちゃんの姿創造しながら楽しみます!レスありがとうございました!m(_ _)m (2020年12月2日 15時) (レス) id: a78139392e (このIDを非表示/違反報告)
羅胤(プロフ) - ﾊﾝﾃｽ@読専さん» ハンテスさん、コメントありがとうございます！自分は夢主の姿が現実離れしていると萎えてしまうタイプなので、敢えて作者として書かずに読者の皆様に想像の余地として残しています。お好きなようにイメージしていただければと思います。ご質問ありがとうございました！ (2020年12月2日 15時) (レス) id: 6b5b4b25ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：羅胤 | 作成日時：2020年11月27日 11時
