24 明暗 ページ24
廊下は少し暗い。
楽屋の明るさと廊下の暗さで
境界線が引かれているようだ。
部屋へ入るギリギリのところで立っていた
彼女にそっと近づいた。
「…案外静かに見る方だよな。」
うっしーが控えめの声で話しかけると彼女は静かに笑った。
今から1時間も経たない前に
「…フジ。コハク。」
懐かしい声が聞こえ頭がクラっとするほどに振り返った2人。
「ア…アキ…？！アキだよね？！」
「あぁ。合ってるよ。」
もう何年も前に実況を一緒に撮っていた彼らの仲間がいた。
他の実況者の友達枠として
イベントに招待されたようで楽屋に来ていた。
「…ナミ。」
「うん、久しぶり。コハク、フジ。」
容姿が変わった、雰囲気が柔らかくなった。
年月ともう1つ理由があるとするならば…
「はじめまして。陽翔くん。」
2人が親になったからだ。
壁がノックされ返事をすると
コハクのメイクさんが顔を覗かせた。
「あ、また後で…」
「いいえ、大丈夫です。いきます。」
コハクはメイクへと急いだ。
彼女が帰ってくるときには
「良かったね〜陽翔。」
フジがイスに座って陽翔くんを抱っこしていた。
そして最初へと戻るのだ。
解散してからの方が
むしろ憶測が飛び交い面倒そうではあった。
ほぼ同時期に動画を撮らなくなったグループがもう1つある。
あそこのグループは動画を撮らなくなっても
チラホラと存在を明かしている。
ビジネスグループ。
そんな事を散々好き勝手に言われていた。
関わりが薄れていたのは就職。結婚。子供。勝負。
様々なことが折り重なった結果だったのに。
「フジくん、嬉しそうやね。」
あぁ…
「コハクさぁ…」
何故…
「なに？ガッチさん？」
何故そんなにも
「フジのこと、大好きでしょ。」
「…周りが変われど大事な人に変わりはないでしょ。」
優しく笑えるのだろう。
「…羨ましいわ。」
うっしーがボソッと呟いた。
「えっ？！コハク帰ってたの？！」
最初に気がついたのは1番背の高い彼だった。
「来なよ〜」
「わ〜！陽翔くん暴れないで〜！」
フジの膝の上で陽翔くんが暴れている。
「陽翔〜ちゃんこしようね〜。」
「おかえりコハク。」
「ただいま。」
コハクが明るい楽屋に一歩足を踏み入れた。
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作者名：みこと | 作者ホームページ：http://なし)ー
作成日時：2022年6月14日 20時
