【ヒロアカ】クズ先輩とタフネス君【男主】 (ページ35)

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３４話ページ35

お盆何て物はないから熱い器を布団越しで支えて一口食べる。
濃すぎない優しい味でかなりおいしい。これなら体調悪くても食べれそうだ。

『旨いな、俺ん家でこんな家庭的な物を食える日が来るとは思わなかった。お前凄いな。』

「別に冷蔵庫にあった有り合わせで作ったもんっすから大した事ないんすけど…先パイは料理出来ないんすか？」

『レシピ見りゃその通りには出来る。だけどお前みたいに有り合わせとか応用は出来ない。
冷蔵庫の中、中途半端に食料あったろ。調味料とか食材とか、レシピで乗ってる量だけ買うとか出来ないから大体余るんだ。

それで、それを使う為のレシピ探したらまた別の食材が必要で、だけどぴったりの量は売ってなくて。
だからちょっとずつ余って使えなくて…。

だからお前、単純にすげーな。』

「……んなっ、こんくらい誰でも出来るわ！」

『残念、少なくとも俺は出来ないから誰でもではないな。』

おちょくる様な物言いは変わらないが、熱のせいか少し会話がたどたどしく、物凄く素直な感想に驚きを隠せない爆豪。

「～～っっ、熱は！！」

驚きと褒められたという嬉しさと、照れ隠しに思わず爆豪は声を荒げた。

『３８．２℃』

「たけぇ！食ったなら薬飲んでさっさと寝ろ！」

『おー。』

「鍋にまだ雑炊入ってっから腹減ったら温めて食え！後ゼリーとかスポドリ冷蔵庫に入ってっから！
まだ何かあるか！」

『うつるからさっさと帰れ。』

「言われんでも帰るわ！！これを気に少しくらいまともな生活しやがれ！」

『爆豪。』

コンビニで買ってきた食べやすそうな食料や飲み物を冷蔵庫に入れて自分のカバンをひったくる様に掴んで持つと病人がそばにいるのにも関わらず足音を立てて玄関へ向かう。
そんな爆豪にAは布団の中で座ってまだ雑炊が残ったお椀を持ったまま話しかけた。

「んだよ！まだ何かあんのか！！」

『ありがとうな、助かった。』

今までAが笑ったと言えば、知り合いなら一瞬で作り笑いと分かる営業スマイルや企みを含んだゲスイ笑み。
しかし、今のAは見た事のない、小さいが優しい、本当の笑みだった。

「～～っっ、さっさと治して特訓付けろよ！！」

力任せに扉を開けて閉じる。
バタンと大きな音や怒声は病人に触るが、今の爆豪にはそんな余裕はなかった。

閉じた扉を背にずるずるとしゃがみ込んで両腕で顔を隠す。

「マジでずりぃ…。」

腕で隠しきれていない爆豪の顔は真っ赤に染まっていた。