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ドアを開けた先に拡がっていた光景は、俺の視界に飛び込んで来ると共に、俺の思考を停止させるには充分だった
目の前にいる男は、紛れもなく、この船のクルーで、今俺が蹴り飛ばす必要はねぇはずなのに、
その腕の中にすっぽりと収まるように、華奢な肩を震わせているのは、同じく紛れもなく、この船のクルーで、そして俺の誰よりも大切な人
無骨なその腕が、彼女の肩を強く抱き寄せている
少しはだけたシャツからは、白い肩と、柔らかな素肌が見えていた
だけど
ゾロが、俺の姿に気づいて、俺の目を見た時
｢やめてっ！サンジくん！！｣
ナミさんの悲鳴に似た叫びと、
俺がその男を思い切り蹴り飛ばすのは、ほぼ同時だった
｢ってめぇ！！！｣
勢いよく音を立てて、医務室の机にぶつかったゾロの体が、その衝撃で積んであった医学書をバサバサと床に散らかした
無抵抗な、その男の胸ぐらを掴んで、無理やりこちらを向かせた
｢お前っ！どういうつもりだっ！！｣
瞳をうるませたナミさんが、静止する声も、今の俺を止めるには遠く、
俺が胸ぐらを掴んだ手に力を込めて、睨みつけてもゾロは、抵抗を見せなかった
知っているはずだ
少なくとも、俺がどれだけ彼女を大切にしていたか
｢何とか言えよっ！！！｣
つまらねぇ言い訳なんか聞きたくねぇ
だけど、黙りこくったままのゾロには余計腹が立った
｢っ…｣
俺がゾロの体を壁に押付けて睨みつけると、目が合う。
やっと、その口が低く開いた
｢お前と…ナミが、そういう関係だとは知っていた。知っていて、手を出した俺が、悪ぃ…｣
｢てめぇ、それなら仲間の女に手を出すような真似っ！｣
｢だけどっ…！｣
ゾロは、無抵抗のまま、それでも鋭い眼光のまま、俺を見上げた
｢俺は、ずっと前からナミが好きだった。お前らの関係よりも、ずっと前からっ…！｣
｢っ…！｣
｢不安定なナミを、俺が守ってやりたかったっ…｣
その声と共に、俺の中でブチッと何かが音を立てて切れた
制御なんて、出来るはずもなく、俺はその目の前の男に目掛けて、思い切り拳を振り下ろした
｢やめてぇ！！！！｣
叫びにも似たナミさんの声が空気を切り裂いて、だけどその振り下ろした俺の手は、目の前の憎い男の頬を揺らすことは無かった
｢ごめん、なさいっ…｣
｢…だめだよ、ナミさん｣
俺の背中から、振り下ろそうとした腕に勢いよく飛びついてきたナミさんは、俺の腕にしがみついて、肩を震わせて泣いていた
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作者名：新世界のハート | 作成日時：2024年2月22日 19時
