side ナミ ページ19
ぼんやりとした頭で、私を見下ろす男を見つめた
その姿は、私が見なれた彼ではなく
むしろ真正面から見つめ合うことなんて、珍しく
だけど、私は彼の背中を知っている
ぶっきらぼうで、無愛想なコイツが
いつも仲間を守るため、背中ごしに私たちを守ってくれるから、私は彼と向かい合わせに見つめ合うより、この背中の温度を、強さを知っている
ゾロは、私が知る普段より、何故かずっと苦しそうな表情をしていて
お酒のせいかよく回らない頭でぼんやりとその表情を見つめていたら
サンジくんが気にするなんて
ゾロらしくないセリフが聞こえた
仲違いばかりのふたりだけど
本当はお互いを信頼しあっているのを、みんな分かっている
そんなゾロから、戦闘以外でサンジくんの名前が出るなんて珍しいな、なんて
サンジくんは、誰にでも優しいから
私がゾロといても、誰もいても
そんなことにいちいち目くじらを立てて怒るような人じゃない
もう少し、嫉妬や独占欲を見せて欲しいくらいに
そんなつもりで、私が返した返事に
何故かゾロが一段と傷ついたような顔をするから
どう声をかけていいのか分からなくなった
気づいた時には
ゾロの哀しい目と視線が合って
温かいものが唇に触れた
私がよく知る、少し癖のあるタバコの味とは違う
鉄のような香りがした時に
それがゾロの唇だと気づいてからは、
急に全身の血が沸き立つように熱くなって
咄嗟に、サンジくんの顔が過ぎった
性急なキスに、呼吸もままならず、
だけどどこかで、この分厚い胸板を押し返さなきゃ行けないっていう理性が働いた
それでも、私の名前を呼んで、
必死に熱をぶつけてくる男の姿に
何故か、私の体は動かない
身体をなぞる無骨な指先が
私の知っているサンジくんの細くて長い指先とは違っていて
だけど、感情のままに、こんなふうに求められる感覚に、私の体は答えるように熱を帯びた
だけど、途中でゾロの指先が、すっとはなれて
悪ぃっ…
なんて、苦しそうな表情を向けて私から離れた彼の姿に
私はなんと言葉をかければよかったんだろう
ゾロの熱を帯びた瞳をこのまま見つめてしまったら、もう二度と、サンジくんの腕に抱きしめられることはなくなりそうで
心の奥で、こんな時でさえ、
サンジくんがくれる、甘い熱を思い出して
私はそっとゾロから視線を外した
その時に、聞きなれた革靴が近づいて来る音がして、咄嗟に身を固くした時
ゾロの太い腕に抱きしめられた
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：新世界のハート | 作成日時：2024年2月22日 19時
