PRIDE（プライド） (ページ1)

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side サンジページ1

彼女の前では、いつでも紳士的でいたかった。
例えそれが、偽りの自分であったとしても。

＊

彼女の絹のような細い髪を指ですくい上げるようにして、すいた。

サラサラと指を滑り落ちるオレンジ色のそれは、柑橘を思わせる甘酸っぱい香りと、微かに、俺がよく知る香りがした。

少しクセのある、そのタバコの香りは、普段俺が愛用している銘柄のもので、それは間違いなく、昨日の情事の際に、俺が彼女に纏わせた愛情の証だった。

彼女の白い肌に、俺の印を刻んで、この独占欲の塊のような気持ちを具現化したい願望に、何度駆られたかなんて、わからない。

だけど彼女のキメ細やかな肌に触れて、甘い体温を感じる度、そんな罪深い行為を出来るはずもなく、せめて俺の事を次の日の朝まで感じて欲しくて、絡みつくように彼女の体を愛した。

昨晩の甘酸っぱい記憶を反芻しながら、朝日と共にやって来る日常を受け入れるように上体を起こすと、はだけたままのシャツのボタンを閉めた。

すぐ隣には、長いまつ毛を伏せたまま、静かに上下する肩があった。

華奢なその肩や、腰は、俺が力いっぱい抱きしめると折れてしまいそうなほど細くて、だけど彼女の中心の熱を知る度に、俺の心も身体も、彼女を壊してしまいそうな位に求めてしまう。

だから、彼女を怖がらせないように、壊さないように、いつもそっと、この熱を抑えながら彼女を愛した。

情けないほど彼女に惚れ込んでいるくせに
彼女の前では、どんな時でも紳士的でいたかった

それが例え、一糸まとわぬ彼女の綺麗な体を抱いている時でさえ

「ナミさん、俺、いくね…」

布団を肩までかけてやると、彼女は薄い唇で、ん...と呟いた。

昨日も深夜、このところ海が荒れていて疲れの溜まっている彼女の体力を無視して、俺の熱をぶつけてしまったから。

見張りのロビンちゃんが、この女部屋に帰ってくる頃までには、俺の香りも消えているはずだから。

そんなことを考えながら、乱雑にかけられていたスーツの上着を自分の肩に引っ掛けると、俺は女部屋を後にして、キッチンへ向かった。

昨日の彼女の甘ったるい声がまとわりつく、脳内を少しずつ冷ましながら、俺はこの船の仲間の胃袋を預かる身として、いつもの仕事場へ足を進める。

キッチンの扉に手をかける直前、扉の向こうに強い気配を感じて、ふと手を止める。