World is mine 2 (ページ10)

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器用貧乏ページ10

※俺バンのときのおはなしです。

Aちゃんは器用だ。

ぽやんとしてるかと思えば誰よりも周りを見ていたり、
瞬時に求められたことに応える能力があったり

要は人間としての器がでかい。

それに相反して自分のこととなると急にわかんなくなっちゃうのはなんでなんだろうね？

今日だって上手にメイクで隠れてるし全然普通に舞台をこなしているのに
たまたま見てしまった鎮痛剤を飲む姿を見て初めて具合が悪いことに気付かされた。

俺が見つけなかったら誰にも言わずにやりきるつもりだったん？
それが出来てしまうAちゃんの器用さに、もしかしたら今までもそういうところがあったのかもしれないと思って怖くなった。

深田「Aちゃん？」

『んー？深田どしたの？』

誰もいないタイミングを見計らって声をかけた。
確かにいつもよりも頬が色付いてるようにも見える。

深田「調子わるいん？」

『へ？…なんで？』

問い詰めたい訳じゃない
ただ、頼って欲しいだけ

その事も丁寧に伝えながら、先程見てしまった光景を口にすると
俯いてちょっと考えたAちゃんは困ったように笑った。

『だいじょうぶだよ？ちょびっと頭痛かっただけだから予防？てきな？』

深田はいつもやさしいから私の事気にしてくれるもんね、と

それ以上俺が追求出来ないような言葉選びをするところも器用で片付けてしまえばそれまでで。

深田「…わかったよ、けど1個だけ約束してくんない？」

『なあに？』

深田「無理だけはしないで。無理になる前に絶対教えてね」

『…てっきり檜山に告げ口するのかと思った』

深田「そうしないでって顔したのAちゃんでしょ？だか
ら俺との約束も守って」

『…わかった、ありがとう』

ごめんね、と付け加えて眉を下げるAちゃん。

最近俺もAちゃんのことが少しわかるようになっていたから過信しすぎたのかもしれない。

Aちゃんが自分の限界を計れないことなんて
とっくの昔に気付いてたのに。

公演終わりの薄暗い舞台裏

捌けて楽屋まで行く時に階段を降りなきゃいけないところがあって

俺の前を歩くAちゃんは多分そこで体調の限界だったんだと思う。

段差を踏み外したAちゃんは手すりを掴む間もなくぐらりと大きく傾いたのが見えた。

深田「…Aちゃん…！！！」

必死に手を伸ばして彼女の頭を抱える

俺の身体そのまま数段下まで大きな音を立てて叩きつけられた。

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