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Aが打ち上げに行く、と仕事場で別れてから相手役の俳優の良くない噂を友達から聞いてしまって
何となく勝手に心配になってので近くまで車を走らせているとAからの着信があった。
路肩に止めて電話に出ると、助けて、と今にも泣き出しそうな震えた声が届いた。
元木「落ちついて、大丈夫もうすぐ着くから。1番偉い人に挨拶して出て来れそう？」
無理なら俺が店まで上がってくよ、と伝えると
優しいAのことだから相手の面子も潰したくないんだろうし、俺に迷惑もかけたくないからと「自分ででれる」と返ってきた。
正直上擦った声でかなり酔いが回ってるんだろうと察しがついたから、お店から1人で出てこれるか心配でたまらない。
店の少し外れに車を停めてAを待つ。
彼女の一声でお開きになったのか少しずつ店から人が出てきて、その中にAも見つけた。
全然酔っ払った様子はなくにこにこと各方面に頭を下げて偉い人がタクシーに乗るのを見送っている。
次の店に行こうと誘われているのか一生懸命首を振るAに安心したのも束の間、Aの肩を抱いて無理矢理進行方向を変えようとする例の俳優が目に飛び込んできた。
相当酔ってんのか周りも気にも留めてないので流石に我慢出来なくて車を飛び出す。
元木「お疲れ様です。明日も仕事あって迎え来たんで、A連れて帰ります」
腕を引いて俺にすっぽり収まったAは強ばった顔が一気に解けて小さく俺の名前を呼んだ。
顔なじみのスタッフさんが相変わらず仲良いね〜！お疲れ様〜！と陽気に送り出してくれてすんなり抜け出せる空気感に変わった。
元木「じゃ、お疲れ様です」
Aの腰を抱いて踵を返せば例の俳優は苦虫を噛み潰したような顔で俺を見た。
俺で良かったね？黒ちゃんや檜山辺りなら多分顔面ぶん殴られてたと思うよ。
まあ気安くうちのに触る男が悪いんだけどな。
車の中ではぎゅっと俺の服を掴みながらぽやぽやと遠くを見ている。今は何言っても入らなさそうだから黙って俺ん家まで車を走らせた。
元木「A、歩ける？」
『ん、わく、来てくれてありがとう…』
やっと口を開いたと思ったら、ふにゃふにゃとリビングに座り込んだA。
余程気を張っていたのか店の前では1ミリも酔ってませんみたいな顔してたのに、今では頬も赤くて目もうるうるしてる。
元木「お迎え呼べてえらかったね」
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作者名：Nanashi | 作成日時：2024年3月10日 21時
