ラブシャッフル (ページ2)

今日:15 hit、昨日:35 hit、合計:8,855 hit

・ページ2

・

毎週金曜日、仕事終わりの最寄り駅にはいつも寒そうにパーカーのフードを被りながらバイクに寄りかかる湧くんがいる。

「…おつかれ」

『うん。ありがとう』

そんな簡単な会話だけして湧くんの後ろに乗せられて彼の家まで送ってもらう。

こんな週末を半年も重ねている。

彼の家に着いて敷居をまたぐ時、

決まって玄関で私の左手薬指の枷をそこに置いていく。

それは湧くんと私の中での暗黙のルールになっていた。

湧くんは私の左手に手を重ね、何もつかなくなった指先を遊ぶように握って中へと入っていく。

「…今回はまた一段と派手にやられたな」

ソファに座り私を抱き上げて
構わずにお腹の辺りの布をたくし上げる。

腹部に広がる赤黒い痣をやさしく撫でて、「いたい？」と外とは打って変わってまるい声で私に問いかける。

『…ちょっとだけね』

そのまま私をソファに縫い付けて腕や太もも、服の下に隠してた痣の上にやさしく唇を落としていく。

『…っ、わくくん、』

「Aさん、嫌なら嫌って言いなよ、」

ねぇ、と私の首筋に顔を埋めてたまらず私も湧くんを抱きしめる。

『やじゃないよ、ぜんぶ。…いやじゃない』

湧くんはいつも私を壊れ物に触れるみたいにやさしくやさしく抱く人だった。

そして初めて会った時に言ったみたいに
必ず同じことを聞いてくる

まるで私が湧くんを拒絶するのを待っているかのように。

半年もこんな身体の関係を続けているのに
私たちはお互いのことをなんにも知らない。

湧くんの苗字も、年齢も、学生なのかも分からない。
それは湧くんから私に対してもおんなじで。

でも唯一分かることは

お互い替えのきかない相手を想っているってこと

それだけは何となく察しがついていた。

私を抱きながら違う誰かを想って苦しそうな顔をする湧くんを見て

あぁ、なんて可哀想な子なんだろう。と

優越感に浸ることで最低な私は私を保っていた。

・