World is mine (ページ48)

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深田「昔のAちゃんってどんなだったの？」

深田のその一言で俺と颯太は泣き虫だった頃のAの思い出話をすることになった。

***

入所した時からAは異彩を放っていた。

可愛らしいルックスはもちろんのこと、アクロバットもできて元々習っていたからダンスも上手くて
実力も同期の中じゃ頭数個分も秀でてる

そんなだから周りの女の子達がグループを組んでいる中
彼女の実力が高すぎるばかりに肩を並べられる子が他におらず1人あふれていた。

今となっては喜ばしい理由でもあったが、
当時のAはそんなことも知らず
自分に何かが足りていないからこうなのだとより一層の努力を重ねた。

その頑張りはもちろん大人の目にも留まり、
先輩を差し置いて仕事を貰うなんてことも増えてきた。

他よりも一所懸命頑張れることができるからと言って、
心まで強いかと言えばそうじゃなくて。

まだ10代前半のただの女の子

振付師に怒られただの本番でミスって悔しかっただの
そんな些細なことでもAはよくめそめそ泣いていた。

そんな様子が先輩たちの癪に障ったのかは分からないが

自分より後に入った、しかも女の子に実力も仕事量も圧倒的に負けている

妬みや嫉妬から蹴落としの標的にされるのにはそう時間はかからなかった。

「女の癖に生意気」「泣けばどうにかなると思ってる」「仕事だってほんとに実力で取ってんのかよ」

そんな心無い言葉をかけられる度、
Aはどんどん傷ついて楽しかったはずの仕事場でも元気がなくなっていった

それと同時に人前で泣かなくなった。

正確には泣けなくなった。
泣いたらまた嫌なことを言われるから。

心無い言葉が聞こえてくる度、俺も颯太も先輩に口出ししたくてたまらなかったが、

『わくちゃん、そーた、大丈夫だよ』と

Aがぎゅっと唇を噛み締めて我慢するからなんにも言い返すことが出来なかった。

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