World is mine (ページ44)

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檜山「おいでA」

すんすんと鼻をすするAの手を引いてまだお客さんが入っていないステージまで連れていく。

ぎゅっと握られた手がまだ少し震えてるのを感じながら2人並んで板に立つ。

照明が落ちていてがらんと空いた客席を2人でぼーっと眺めながら、ゆっくりと上手から下手に向かって歩いていく。

『…､ずっとへんだなっておもってたんだけど、だいじょうぶだろうっておもって誰にも言わなかった』

檜山「うん」

『スマホ忘れて戻ったとき、声かけられてやっぱりへんだとおもったけど、長瀬に内緒にしてってお願いしちゃった、みんなに心配かけると思って、』

小さく開いた唇からたどたどしく紡がれていく自責の念。

『いつもみんなに危機感ないって怒ってもらってたのに、またじぶんのことだいじにできなくて、っ、あれからほんとはずっとまた襲われたらどうしようってこわくて…っでも、今にげたらもう這い上がれない気がして…！こわいの気づかないようにしてたけど、やっぱだめだった…っ、よけい周りに迷惑かけて、も、やだ…』

そう言って握る手に力がこもる。

自分のことになると無頓着になるところも、人より不器用で上手にできないところも、限界を飛び越えちゃうところも

全部Aの1部なんだけど、かえってそれが彼女を苦しめるときもある。

檜山「…ん、よく頑張ったよ。くちびる、血出るよ」

ぎゅっと噤んだ唇を親指で撫でる。

そうするうちに『でも、』とまた言葉を紡ぐ。

『こわいけど…っこの場所を誰にもゆずりたくない…』

いつだか忘れたけど前に湧が「檜山ってAに自分の気持ちを白状させるの上手いよな」と言ってきたことがある。

付き合いが長い分ほかのメンバーよりもAの気持ちを察することは出来るかもしれないけど多分そうじゃなくて、

単に俺が無遠慮にAがどうしたいのかを聞いてやれる関係だからな気がする

どんな答えが返ってきても、俺はそれを肯定することを決めているから。

檜山「客席から見るAってさ、すんごいキラキラしてて元気出んの。だから一緒にAの居場所を守らせてよ」

『…こうせい、っわたしまたがんばりたい』

真っ直ぐ客席を見つめるAにえらいね、と頭を撫でて楽屋へ戻る。

傷が癒えるには時間がいるけど俺もステージに立つAが1番好きだから
そのためにはなんだってしてやりたい。

直後舞台に立つ彼女はいつにも増して輝いていた。

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