World is mine (ページ29)

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深田｢…それ、Aちゃんが言う……？
俺はただ、周りよりも経験が浅いしダンスも下手だしやるしかないから人より頑張んなきゃなのは当たり前で…｣

口から出る声が震える。

俺なんかが足掻いたって無駄だってわかってるよどうせ
それでもやるしかねぇじゃん

周りより出来ないからやるしかねえし、やったってスタートラインから開いた経験の差が埋まる訳でもないけど。でもやんないと、なんにも出来ないままじゃんか。

俺が頑張ることになんか理由が必要なん…？

何故か言い訳を探すように焦る俺にAちゃんは目を丸くしてとことこと近付きぎゅっと手を握る。

『りゅせのそういう所、本当にすごいところだと思う』

深田｢…は、？｣

『誰よりも努力してるのにそれを当たり前のことだってやってのけるの、みんなができる事じゃないと思うから……。
だからそんなに自分のこと出来てないって下に見るの、なんて言うかもったいない気がする。竜生のすごいところだとわたしは思う、よ？』

Aちゃんが言い終わる前にぼろぼろと目から涙が落ちて止まんない。
このタイミングで俺が欲しい言葉をかけてくれるなんてそんなのズルすぎるって。

女の子の前で泣くなんてだっせぇな、俺。

深田｢…もー、てっきり無駄だって言われんのかと思った…｣

『えぇ？！泣かないでよ、わ、どうしようっ』

ぎゅーっと俺を抱きしめながらぽんぽんと背中を撫であたふたしたAちゃん。

頑張っても頑張っても上には上がいるし
追い抜かれて置いてかれて正解なんて分からないけど、

初めて今までの自分の頑張りを認められた気がした。

…そっか、俺もちゃんと頑張れてたのか。

深田｢…ありがとね、Aちゃん、俺もうちょい頑張れそう｣

『…うん、わたしも。一緒にがんばろうね』

他人のことはよく分かるくせに
自分のことになると鈍感でAちゃんの自己肯定感が低いことに気付くのにそう時間はかからなかった。

俺に欲しい言葉をかけてくれるくせに自分のことはずっと大事にしきれなくて
誰よりも貪欲で、致命的なまでに自己評価が低い。

彼女もまたそんな生きにくさを抱えながらも
多分気付かずに今日もステージに立っている。

自分の限界を簡単に飛び越えちゃうAちゃんだから、
彼女が輝き続けられるようにそばで支えられる存在になりたいな、なんて。

あの時救ってくれた恩返しがいつか出来るように
今日もアイドルを頑張りたい。

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