凪の彼方 (ページ10)

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your side

生きたいと抱いた希望が恐怖で形を歪めた結果
大きな違いとなっててただ死にたくないという強い気持ちに変わっていった。

あの日から私は些細なことでびくびくするようになったと思う。

元木「A、」

3人で過ごす屋上での昼休み

急に湧に名前を呼ばれてビクッと肩を震わせた。

『…びっくりした。急に改まった顔してどうしたの？』

元木「お前息するの下手過ぎない？」

『…へ、？』

元木「呼吸、浅すぎ」

苦しくねえの？
そう言って湧の手が背中を優しく上下する。

内村「俺もちょっと気になってた。Aちゃんいつか過呼吸になるんじゃないかと思ってた」

ゆっくり吸って、吐いて、と
湧の上下する手に合わせて颯太が声をかけてくれる

今まで頭が痛かったのは酸欠だったのか

ふたりに合わせて大きく呼吸すると頭痛も、息苦しさも改善されていった。

『…自分じゃ呼吸が浅いなんて全然気づかなかった』

元木「お前最近……、」

そこまで言いかけていや、やっぱいいやと湧は言葉を飲み込んだ。

私、へんな顔しちゃってたかな。

そんな風に思ってることも、
湧が言いかけた言葉の先もやっぱり颯太だけは察してる様で

内村「Aちゃん、つらくない？大丈夫？」

『…うん、大丈夫だよ。呼吸らくになった。ふたりともありがと』

内村「ならよかった！湧もよかったね！Aちゃん楽になったってー！」

元木「…ん。」

湧と私を颯太の長い腕がまとめてぎゅっと抱き締めた。

元木「けどやっぱA鈍臭いから自分じゃ分かんねぇだろうし、しゃーねーからまた教えてやるよ」

『…ありがと』

そう言って優しく笑う湧は私の頭を雑に撫でた。

それから湧と合図を決めて、
私の呼吸が浅いと決まって湧が肩をポンポンと2回叩くようになった。

元木「…ゆっくりでいいから、な？ちゃんと呼吸しろ」

『…ッ、はぁ…っ、』

元木「大丈夫、A。大丈夫だから。ゆっくり息吐いて」

死にたくないという気持ちが強くなればなるほど
私は上手に息が吸えなくなっていった。

学校では普通でいたいのに
そんな場所でもとうとう家のことを思い出しては帰りたくないと身体を震わせる事が増えた。

助けてと言わない私に
なにも聞かず無条件に手を差し伸べてくれるけど

私の背中を撫でる温かい手は毎回小さく震えていた。

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