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your side
湧が話しかけてくれたあの日をきっかけに
私にはもう1人颯太という友達ができた。
すらっと伸びる手足に
あどけない笑顔
湧に守られているような顔をしながら
湧のことを守っている、そんな人。
私にとって颯太もまた
眩しい存在だった。
そんな眩しい存在なのに他の同級生とはどこか違った雰囲気があって
ふたりの傍は居心地が良かった。
心が優しすぎる
颯太をそんな風に思うようになったのは
関わりを持ち始めて日が浅いタイミングだった気がする。
私の表情や言葉、仕草のひとつひとつを
ゆっくりじっくり丁寧に解釈して彼の中に落とし込んでくれる。
欲しい時に欲しい言葉をくれるところも
言いたくない、知られたくない事には絶対に触れてこないところも
私自信が曖昧な境界線を
彼ははっきりと捉えているように思えてならなかった。
私がふたりの前では普通の女子高生でいたいと願うことを
彼らは気付いていたのだと思う。
毎日飛び交う怒号、割れる皿の音
ヒリヒリと痛む体のあちこちも
きっと全部気づいてる。
それなのに私の口からは1度も家のことを話したことはなかった。
聞かずにただ、傍にいてくれた。
それが何よりも私にとっては有難くて温かくて。
あぁ、生きたい
ふたりと同じ世界で生きていきたいと強く願ってしまった。
仕方の無いことだ、と全てを諦めていた私が
初めて自分の人生に期待した時
今まで心を殺してただじっと地獄が過ぎるのを待っていたのに
それがどうしようもなく怖くなって耐えられなくなった。
父に殴れる度もう無心ではいられない
恐怖で息の仕方も分からない程
死にたくない、とそればかり考えてしまう。
ふたりに出会わなければ
生きたいなんて期待を持たなければ
体のアザが増える度
暗闇から抜け出せないと思い知らされた
身体も痛いし呼吸も苦しくて
頭に酸素が回らないからごちゃごちゃとわからないことばかり考えてしまう。
こんな地獄を生き抜くには
やっぱり眩しすぎたのかもしれない。
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作者名：Nanashi | 作成日時：2024年1月8日 15時
