凪の彼方 (ページ6)

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waku side

※センシティブな描写がありますので苦手な方は飛ばしてください。

あれから何かと理由をつけ彼女を傍で見守った。

元木「なあ、今日3人で帰ろーぜ」

欠席や噂の影響で彼女とまともに関わりを持とうとする人間はいつしか俺と颯太のふたりぼっちになっていた。
彼女が見られないようにと必死に隠す赤や青は日に日に増えていってるようにも思う。

それでも学校にいる間はなんでもない様な顔をして
凛と制服を纏うAを見ると「大丈夫か」以外の言葉をかけることが出来なかった。

彼女もまた、友人の前では普通で居たいのだと

困った様に笑う度に察する他なかった。

家路に付く足取りがいつもよりも重たいことは歩き始めてからすぐに感じていた。

なんとも言えない居心地の悪さを颯太も感じたのか
何も言わずAの手をぎゅっと握り、まっすぐ前だけをみて歩いている。

虫の知らせだったんだろう

彼女が家に入るのを2人で見届けてすぐに
部屋の中からガタン！と音を立てAが飛び出してきた。

『…ッ、わく、そた……ど、しよう……』

元木「A…？どうした…？！」

内村「何があったの？！」

『おかあ、さんが…っ……っ』

泣き崩れたAを抱えて家の中に入る

内村「湧…！見ちゃダメ……！！！」

以前見た乱れた家の中に大きな荷物が2つぽつんと置いてある。
急いで荷物を詰めていたのかカバンの口は空いたままだった。

母と2人ここを出て人生をやり直すの
お父さんに負けないように

だからまだ、大丈夫

もうすぐこの地獄から抜け出せるから───

少し打ち解けたとき、俺達に海を眺めながら
小さな声で教えてくれた彼女の夢

…叶わなかったんだ

詰めかけの荷物、散乱した家具
倒れた椅子の真上にぶら下がる彼女の母親

その姿はあまりにも自分の記憶と重なりすぎて
喉の奥でヒュッと変な音が鳴った。

無造作に置かれた手紙には

暴力による恐怖が心を侵食してしまったこと
この先いつ訪れるかわならない恐怖に怯えながら生活していく自信が無いこと

全部終わらせたい、もう生きていくのが辛いと

逃げて、逃げて、逃げて

その先には何があるのか

考えた末の決断だったのか

殴り書きされた1枚を残して最愛の娘を置いて行ってしまったのだ。

崩れ落ちたAを抱きしめる手があまりにも不格好に震える

何も出来なかったという事実だけが目の前に広がっていた

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