凪の彼方 (ページ38)

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waku side

元木「これなんかのチケット？てか開店時間いつもとちげえじゃん」

『いまはまだ秘密。…なんて言うか私がちゃんと働いてる姿見て欲しいっていうか…』

ちゃんと頑張ってる姿、まだ1回も見せれてないからと
徐々に声量を下げながら子供みたいにぎゅっと自分の裾を握りしめている。

元木「お前はずっとちゃんと頑張ってるよ。
…ん、わかった。予定空けて絶対行くから颯太にもAからちゃんと報告してやりな」

『…ありがとう』

俯いた頬を包み込むと安心した顔をして目を細めた。

その後Aから詳細を聞いたであろう颯太が俺の部屋に飛び込んできた。

内村「わく！Aちゃんが誘ってくれた！うれしい！」

貰ったチケットを大事そうに眺めながら喜ぶ姿もこれまた子供っぽくて俺も釣られて笑顔になる。

元木「最近ちゃんと寝れてるし、Aの中でなにか変わるきっかけがあったのかもな」

内村「前よりもよく笑うようになったし、湧も元気だし。俺今が1番幸せかも」

小さい時から度颯太は俺をちゃんと見てくれてて
傷付いたり悩んだり、そんな時間を共有してきた。

元木「……俺もお前らが笑ってくれればそれで十分」

どうすべきなのか分からなくなっても正しい方へと一緒に歩んでくれる人がいたから俺は腐らずにここまでやってこれた。

内村「そういえばこれ檜山が黒ちゃんとかにも渡してからもしかしたらお店のイベントなのかな？」

檜山に聞いてもAちゃんに聞いてもはぐらかされちゃった〜と不服そうな顔をする。

元木「まー行けばわかるっしょ。今まで檜山にバイト先来んなって言われてたからやっとAが働いてる所見れるわ」

内村「檜山って案外秘密主義だよね〜はあ楽しみ！」

じゃあねー！と言いたいことだけ喋って部屋を出てく颯太。
相変わらずの自由人でなんか安心した。

それから約束の日が来るまでを数え、
いよいよその日になった。

たかがAのバイト先へ行くだけなのに、
あの日俺にチケットを渡してきたあいつがあまりにも覚悟を決めた様な真面目な顔をしてたから

変な緊張感で心臓の音がうるさかった。

前日までたのしみとテンションが高かった颯太も
いざ店の目の前に来ると「わく〜緊張してきたぁ」と俺にしがみついてきた。

意を決して入店すると中は満席状態で、
店内は心地の良いメロディーが響いてる。

元木「A……」

それを奏でるのは紛れもないAだった。

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